探査機「はやぶさ2」の小惑星着陸成功は、民間の宇宙産業にも追い風になりそうだ。
月面探査プロジェクト「HAKUTO-R」を行っている宇宙ベンチャー「アイスペース(ispace)」は、2019年2月22日にパートナー企業の発表会を開き、ファウンダー兼代表取締役の袴田武史氏が、「はやぶさ2」で確立した技術をベンチャー企業が活用する機会が増えることに期待を寄せた。
「R」には「リブート(再起動)」の思い込める
元々、プロジェクトは「HAKUTO」の名称で、世界初の民間による月面探査レース「グーグル・ルナ・エックスプライズ」に参加していたが、主催する米財団「エックスプライズ」が、2018年3月末の期限までに月面に到達できるチームがいないとして、18年1月にレースの終了を発表していた。
その後ispaceは18年9月に、「HAKUTO-R」として月面探査に再挑戦することを発表。「R」には「リブート(再起動)」の思いを込めた。「HAKUTO」ではローバー(月面探査ロボット)のみを開発し、ランダー(月着陸船)は他チームと相乗りする計画だったが、「HAKUTO-R」ではランダーも自前で開発する。
18年2月までに103億5000万円を調達しており、月周回ミッションを20年半ば、ランダーによる月着陸とローバーによる月面探査を行うミッションを21年半ばに行うことを目指す。打ち上げは、米ベンチャー企業「スペースX」のロケット「ファルコン9」を使う。
イスラエル機が「民間初」になりそうだが...
袴田氏は「はやぶさ2」着陸成功について、
「非常に素晴らしいと思うし、宇宙産業全体に対して大きな活力を与えてくれる」
として、
「技術が世の中として確立してきた、というのが大きなインパクト。それによってスタートアップが、今後そういった技術を活用し、大きな市場を造っていくことを構想する機会が出てきたのではないか」
と期待感を示した。
民間の月面探査機をめぐっては、イスラエルの民間団体「スペースIL」が月面探査機「ベレシート」を2月22日(日本時間)に米フロリダ州から打ち上げたばかりで、4月にも月面に着陸予定だ。「ベレシート」が着陸に成功すれば「民間初」となるが、袴田氏は、スペースILが非営利団体だということを指摘しながら、
「継続的な商業ミッションは計画していないと聞いている。直接的な競合ではないと認識している」
と話した。
今回の発表会では、日本航空(JAL)、三井住友海上火災保険、日本特殊陶業の3社がパートナーとしてプロジェクトに加わることが発表された。それぞれランダーの組み立て、リスク管理、固体の電解質を使った次世代電池「全固体電池」の月面検証などで協力する。
ランダーとローバーの実寸大モデルは、2月23日から3月3日にかけて六本木ヒルズ(東京都港区)の展望台「東京シティビュー」で開かれる展示会「メディア・アンビション・トウキョウ(Media Ambition Tokyo)」で展示される。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)