単身賃貸住宅の管理戸数は約57万戸と、「日本ナンバー1」を自認するレオパレスに激震が走っている。
問題物件の入居者1万4443人に、レオパレスが費用を全額負担した上で、順次転居を促すという異例の事態。これまでに補修工事費用などとして累計430億円の特別損失を計上したが、これで「打ち止め」になる保証はなく、経営は一気に苦しくなりそうだ。
「作業効率」のために犠牲にしたもの
最も深刻なのは、天井の耐火性能を満たさない物件。1996~2001年に着工した3階建ての「ゴールドレジデンス」というタイプで、1都2府29県の641棟が、設計図通りの施工ではなかった。安全性に問題があると判断し、入居者7782人に転居の要請を始めた。
これだけではない。住居間の壁である「界壁」の断熱材に、設計図上の「グラスウール」ではなく、「発砲ウレタン」が使われていたケースが、「ゴールドレジデンス」「ニューゴールドレジデンス」の1都15県の771頭で見つかった。建築基準法で定められた遮音性の基準値を満たさない可能性がある。さらに「ヴィラアルタ」を加えた3タイプで、設計図と違う外壁が使用されていた。こちらは1都15県の925棟で不備があった。
3タイプの総施工棟数は2492棟。このうち、重複を除き、1324棟で何らかの不備があったことになる。
施工不良が相次いだ原因については「作業効率を向上させるため」と説明。コスト削減ではなく、現場の作業負担を減らすのが目的との見方を示した。
3営業日連続のストップ安
会社側が初めて不備を認めたのは2018年4月27日。「ゴールドネイル」「ニューゴールドネイル」シリーズのオーナーから、建築確認を受けた図面と実際の施工内容が異なると指摘された。社内で確認したところ、調査した95棟のうち、屋根裏などにあるべき界壁がない物件が86棟あった。
さらに5月29日には、「ゴールドレジデンス」「ニューシルバーレジデンス」など6シリーズでも、「界壁なし」「界壁の施工不備」が確認されたと発表。ただ、この時点で「業績に与える影響は軽微」との見解を示していた。50億円の特別損失計上を発表したのは8月に入ってからだ。その後10月に20億円、2月に360億円と、特損を積み増した。
レオパレスは2018年12月末時点で現金預金は892億円(連結)、自己資本は1069億円(自己資本比率35.2%)と十分な水準にあると強調している。だが株式市場は甘くなく、レオパレス株は発表翌日の2月8日から3営業日連続でストップ安。515円から255円へと、瞬く間に半値になった。その後もずるずると下落し、18日には200円まで下がる場面も。全棟調査はなお継続中で、今後も施工不良が出てくる可能性があるほか、オーナーや入居者から損害賠償を求められるのも間違いないだろう。
ロフトの標準装備、建築から管理までを担う「一括借り上げシステム」、家具・家電付きのマンスリー物件などユニークな取り組みで業界をけん引してきたが、肝心の安全・安心、法令遵守が疎かになっていた。失った代償はあまりに大きい。