教育現場の「色の壁」を無くす 教科書、チョーク...ユニバーサルデザインが浸透

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   「これなら分かる...!!!」「素晴らしい取り組み」――。山川出版社の教科書『詳説世界史B』のデザインをめぐり、色を判別しにくい「色覚障害」を持つ人たちから感動の声が寄せられている。

   障害を持つ人にとって教科書の図版は"鬼門"となっていたが、教育現場では改革が進む。

  • 『詳説世界史B』(山川出版社提供)
    『詳説世界史B』(山川出版社提供)
  • 『詳説世界史B』(山川出版社提供)

「CUD」普及進む

   日本眼科学会によれば、日本人の色覚障害者(先天性)は男性で約5%、女性で0.2%いる。男女同数の40人学級であれば、1人は対象となる計算だ。そんな中、『詳説世界史B』が色覚障害者にも配慮していると、ツイッターで話題になっている。

   色覚障害者に配慮した色分けは「カラーユニバーサルデザイン(CUD)」と呼ばれ、教育出版や大日本図書、三省堂など教科書を発行する出版社で導入が進んでいる。

   山川出版社の担当者は2019年2月19日のJ-CASTニュースの取材に、CUDへの取り組みは04年ごろから注目され始めたと明かす。同年には、CUD の啓蒙などを行うNPO法人「カラーユニバーサルデザイン機構」が設立された。

   山川出版社の教科書は2011年にすべてCUDに対応。『詳説世界史B』は、

「すべての地図や図版を、専門の大学の先生にチェックして頂きました。色の使い方だけでなく、例えば線の種類を変えたり、地図の中も色による差違だけでなく、斜線で示したり、いろいろ工夫するよう指示を受けました」(担当者)

チョーク、デジタル教科書にもCUD

   教育現場でのCUD対応は、ほかにもある。

   日本理化学工業は04年、色覚障害者でも判別しやすい4色(朱、黄、青、緑)を使った「ダストレスeyeチョーク」を発売した。同社広報によれば、売り上げは右肩上がりで増加。昨年は国会で「色覚チョーク」が取り上げられ、学校での導入が急増したという。「現在は普通のチョークの売上が圧倒的に多いですが、今後は需要を見ながらシフトも検討していきます」。

   また、文部科学省が18年12月に公表したタブレット端末などで利用する「デジタル教科書」の活用に向けたガイドラインでは、

「(タブレット)画面をグレースケールや白黒反転等で表示し、カラーユニバーサルデザインに対応することができる場合がある」

と注記している。日本医師会はガイドライン作成に向け、「デジタル教科書においても、色覚異常の児童生徒への配慮ある色使いや色のバリアフリーが必要である」と提言していた。

   「カラーユニバーサルデザイン機構」の伊賀公一副理事長は、取材に「色の使い方に関する問題は少なくない。何不自由なく皆が使える色使いが広がってほしい」と話した。

(J-CASTニュース編集部 谷本陵)

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