2018年3月に北朝鮮への「入国」が報道されていた日本人拉致被害者らの動向について共同通信が19年2月15日に改めて報じ、その背景をめぐり様々な憶測が広がっている。
共同によると、北朝鮮側がこの被害者の動向を伝えてきたのは14年。仮にこれが正しいとすれば、政府は約4年間にわたって事実を伏せていたことになる。この1年間、国会質疑でも政府は2人の動向についてコメントを避けてきた。そんな中での「新情報」の背景には何があるのか。
2014年の「伝達」が18年と19年にニュース化
動向が伝えられているのは、政府が北朝鮮からの拉致被害者として認定している神戸市の元ラーメン店員、田中実さん=失踪当時(28)=と、政府が「拉致の可能性が否定できない」としている金田龍光さん=同(26)=の2人。田中さんと金田さんは同じ児童養護施設で育ち、同じラーメン屋で勤務していた。
共同は18年3月、北朝鮮が拉致被害者や行方不明者を含む「すべての日本人」の再調査を約束した「ストックホルム合意」が結ばれた14年5月よりも前の段階で、2人について「入国していた」と日本側に伝えていた、と「日本政府関係者」の話として報じていた。2人の状況については、
「本人は平壌で家族と共に生活、現地に残る意向があると日本政府に説明した」(田中さん)
「本人の帰国の意思は不明で、平壌に住んでいると伝えられたという」(金田さん)
とした上で、日本側とは面会できていないとも報じていた。
ただ、この報道を受けた国会での質問に対して、政府は一貫してコメントを避けてきた。例えば18年3月28の参院予算委員会では、立憲民主党の有田芳生氏の
「北朝鮮側は田中実さんについてどのように通達してきましたか」
という質問に対して、河野太郎外相は
「拉致被害者については平素から情報収集に努めているところでございますが、今後の対応に支障を来すおそれがあることから、その内容については差し控えます」
と答弁。安倍晋三首相に対しても共同通信の報道に関する事実確認を求めたが、
「コメントすることによって明らかにその(拉致被害者の)奪還につながらない場合があるということは御理解をいただきたい」
と述べるにとどめていた。
今回の報道も共同通信の「特ダネ」として報じられ、配信先のニュースアプリが速報を打つなど大きな話題になったが、現時点で政府側からの明確なリアクションは確認できない。