身分や犯罪歴なども記され、現在は閲覧できない明治時代の「壬申(じんしん)戸籍」が「ヤフオク!」のサイト上に出品され、どこにあったものなのかと関心を集めている。
この出品は、結局落札が取り消され、法務省側が回収した。なぜ閲覧禁止のものが出回っていたのか、法務省に聞いた。
現在は子孫、職員も閲覧不可能
「明治十六年十二月改」。出品された壬申戸籍は、表紙にこう書かれ、厚さは数センチもある冊子だった。静岡県浜松市辺りの戸籍という。
壬申戸籍は、1872年(明治5年)から作られた日本初の全国的戸籍で、「平民」「士族」といった身分のほか、犯罪歴、職業なども記されていた。被差別部落出身者を指すともみられている「新平民」という記載のあるケースもあった。
法務省では、差別につながるなどとして、1968年(昭和43年)に各市町村に閲覧禁止を通達した。現在は、将来の学術に資するためもあって、地方法務局などで包装・封印したうえで保管されている。戸籍に載った人物の子孫ばかりでなく、職員も見ることはできないという。
それが、ヤフオクで2019年1月31日に「明治戸籍」として出品されていたことが分かった。珍しいものだけに関心を呼んで、その後に90件以上も入札があり、2月7日に13万3000円で落札された。
ヤフーの広報室にJ-CASTニュースが18日に聞いたところによると、ヤフーでは、規約に照らして不適当な出品だと判断し、翌8日に落札を取り消した。その後、壬申戸籍が手もとに残っては解決にならないと判断し、法務省側に回収を提案した。
かつては民間人が管理...その後引き継がれず?
法務省の民事第1課によると、静岡地方法務局が2月14日、「外に出るべきものではない」などと出品者に会って説明し、出品者から無償で回収した。出品者は、「そのような大事なものとは知らなかったので、お返しします」といった内容を話した。民事第1課では、壬申戸籍を持っているべきではないとしたが、それ自体は違法とは言えないという。
出品者の壬申戸籍は、原本かコピーかなどは分からず、なぜ持っていたのか特定は難しいという。1898年(明治31年)の民法施行で市町村が戸籍を取り扱う前は、戸長と呼ばれる民間人が管理しており、民事第1課では、何らかの理由で市町村に引き継がれなかった可能性があるとみている。法務局から流れた可能性は低いという。
なお、壬申戸籍を巡っては、2017年8月も現在の東京都豊島区に当たる地域のものがヤフオクに出品され、法務省が回収したことがある。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)