日本は「ポイントサービス大国」と呼ばれる。既にその市場は1兆円を超えていると言われ、この先も拡大する見通しだ。ポイント市場が広がっている背景には何があるのだろう。
あえて説明するまでもないかもしれないが、念のために抑えておく。そもそもポイントサービスとは、顧客が商品やサービスを購入した際、企業がポイントを付与するもので、ポイントが一定数たまると商品と交換できたり、1ポイント=1円と言った交換比率で現金のように使える。
先駆者はあの家電量販店
「Tポイント」や「PonTa(ポンタ)」「楽天スーパーポイント」など、コンビニエンスストアからカラオケ店、レンタカーショップなど幅広い店で使える共通ポイントが代表例だ。また、飛行機に乗った際に付与される「マイル」やクレジットカード利用高に応じて付与されるポイントをためるものもある。
ポイント市場は急速に拡大しており、矢野経済研究所が2018年夏発表した調査結果によると、2017年度の市場規模は1兆7974億円に上った。2018年度は1兆8884億円まで拡大する見通しで、2022年度には2兆2000億円と2兆円を超えると予想している。
なぜポイントはこれほど広まっているのか。そもそもポイント隆盛の走りは30年ほど前に家電量販手大手のヨドバシカメラが導入したゴールドポイントだと言われている。顧客を囲い込む手段として始まったところ、大きな成功を収めて他の家電量販店にも拡大、さらに他業種にも広がったとみられている。
言うまでもなく、ポイントは消費者にとってメリットが大きい。買い物をした際、レジなどでポイントカードをただ提示するだけで、お金と同じように使える価値を得られるからだ。
「ゼロ金利」時代を生き抜く庶民の支えに
現在の日本は実質ゼロ金利で銀行などに貯金しても利息はほとんどつかない。例えば、100万円を普通預金にしても1年後の利子は8円程度だ。しかし100万円買い物してポイントカードを提示すれば、実質的に5000円、1万円、あるいは数万円は戻ってくる場合もある。「賃金も伸びないうえ、資産運用も期待できない中、生活防衛としてポイントは欠かせない存在になっている」と流通業界関係者は話す。
企業側にとっても、囲い込み以上のメリットがあるという。デフレから完全に脱却できない経済環境の中、簡単に値下げできない状況になっていることが、その背景にある。「特に食品や日用品は、一度値下げすれば、また同じ価格に下げるまで、客はなかなか買わなくなっている」と小売り業界関係者は話す。一度値下げすれば負のスパイラルに陥りかねないが、値下げの代わりに、ポイントを多めに付与するような形でセールを行えば、客は買い控えしにくくなるという。
一方、ポイントは消費者の価格に対する感覚を鈍くし、企業側が売りやすい状況にもなる。「ポイントを付与してくれる店の商品が、他の店の商品より高くても、『ポイントがつくから高くても構わない』と思う人が少なくない」とマーケティングに詳しい専門家は指摘する。
厳しい経済環境を乗り切るため、消費者側も企業側も考えを巡らし、工夫を重ねた結果、たどりついたのがポイントサービス。最近では、ポンタと「dカード」など二つの共通ポイントを両方付与する店も拡大中で、ポイントサービス市場はさらに膨らむ見通しだ。