米国のドナルド・トランプ大統領は2019年2月15日(現地時間)、安倍晋三首相からノーベル平和賞に推薦された、と明かした。
記者会見で唐突に飛び出したこの発言に、各国で驚きの声が広がった。「信じられない」といった反応もあれば、安倍氏の「交渉の巧みさ」を評価する声も。一方、単にトランプ氏が「勘違い」をした可能性も指摘されている。
安倍首相が「日本を代表して推薦」?
「私は日本を代表して、敬意を込めてあなたを(ノーベル平和賞に)推薦しました」――トランプ氏は15日、ホワイトハウスでの記者会見で、安倍氏からの言葉とするものを披露した。
発言は、2月末に予定される2回目の米朝首脳会談について語る中で飛び出したものだ。トランプ氏はこれまでの交渉により、北朝鮮がミサイル発射実験をストップしたと誇る。安倍氏の推薦は、こうした功績をたたえたものだという。選考を行うノルウェー・ノーベル委員会に提出したという「美しい書簡」も、トランプ氏に示したとしている。
2018年のノーベル平和賞をめぐっては、米朝首脳会談の実現などにより、米共和党の下院議員らが候補としてトランプ氏を推薦、また韓国の文在寅大統領も、南北首脳会談直後に「トランプ氏が受賞するべき」との考えを示したことで知られる。しかし、安倍氏による「推薦」の存在はこれまで知られてこなかった。それだけに、トランプ氏の発言は各国のメディアで大きく報じられた。
茂木健一郎氏、皮肉っぽく「すばらしい一手」
16日16時の時点で日本政府側から、この件についての言及がないこともあり、国内ではそもそもの真偽をいぶかる声、あるいは戸惑いの声が強い。前東京都知事の舛添要一氏はツイッターで、
「トランプ大統領によると、安倍首相がノーベル委員会に書簡を送り、ノーベル平和賞に大統領を推薦したそうだ。北朝鮮との対話を評価してとのことだという。本当なのか」
と困惑気味につぶやく。一方、脳科学者の茂木健一郎氏は、
「安倍さんがトランプさんをノーベル平和賞に推薦したのは、トランプさんの気分を良くして日米関係を安定化するすばらしい一手。ノーベル賞の活用として画期的に新しい。次なる一手として、紅白歌合戦に出場していただいたらどうか。トランプさんの気分を良くするために日本ができることはまだまだある」
と、皮肉っぽくツイートした。
米国でも、さまざまな意見が出ている。一定の評価を示したのは、朝鮮半島情勢に詳しい米国の元外交官、ミンタロー・オバ氏で、「もし本当なら」と前置きしつつ、「お世辞に弱いことがたびたび証明されている人物(=トランプ氏)に対しては、非常に巧妙な手だ」。
対して、米ワシントン・ポストは、上記のように文氏が過去に「トランプ氏に平和賞を」との趣旨の発言をしていることもあり、トランプ氏が安倍氏と文氏を取り違えて発言したのではないか、との見方を紹介している。実際、トランプ氏は過去にも、発言内容の「勘違い」が何度か話題になったことがある。
韓国のネット民の反応は...
この「勘違い」説は、韓国でも報道されている。文氏に批判的な読者が多い保守系大手紙「朝鮮日報」ウェブ版のコメント欄には、「トランプの中で、文在寅はどれだけ存在感がないのか」と嘆くような書き込みが見られた。一方、リベラル系紙「ハンギョレ」のコメント欄では、「ずるがしこい」「強者だと卑屈なほど持ち上げる」など、日本側への警戒感を示すコメントが多くみられた。
ノーベル平和賞は各方面からの推薦を受け付けており、年によっては被推薦者が200を超えることもある。なお、ノーベル賞の公式サイトによれば、過去の被推薦者にはあのアドルフ・ヒトラーや、ヨセフ・スターリンなども名を連ねている。