持つべき人は持つようになった
麻雀牌をかき交ぜる音、再会を喜び合う会話が聞こえなくなった中国の農村の変化は、中国のスマホ市場が飽和状態になりつつあることを示しているともいえる。
中国のスマホ利用者は2017年に7億5千万人。2018年の数字は未発表ながら、ふたけた成長が維持されたとすれば8億人を超えたはず。 14億の全人口のうち、乳幼児や高齢者、そして極度に貧しい人々を除けば、持つべき人のところにはスマホはほぼ行き渡ってしまったといえる。
米国の調査会社IDCが発表した調査によると、2018年の中国のスマホ出荷台数は、2017年より約1割減って、約3億9800万台だった。減少の背景について、「景気減速などによる市場縮小」という見方が多い。ただ、スマホを持ちたい人は既に持ってしまっているのだから、買い替えを控える人が少し増えたら、これくらい減ることはある意味で当たり前だろう。
これから、スマホの数量的な成長には限りがあるだろう。けれどスマホは中国人の生活を引き続きもっと変え続けていくはずだ。スマホがモバイル決済やシェアリング・エコノミーの点から中国にもたらした変化は、既に多くが報道されているから、日本の多くの人にも分かるだろう。ただ、里帰りした家族同士の会話、農村部での楽しみ方がすっかり変わってしまっているなど、実際には、生活のもっと深い部分でスマホは中国を根底から変えつつある。5G時代が到来すれば、変化の度合いはもっと大きくなるに違いない。
(在北京ジャーナリスト 陳言)