盛り場も農村も静かになった 中国を根底から変えるスマホ

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   2019年の春節が終わった。休暇の後、里帰りしていた農村部から大都市に戻る農民労働者、ことに西部のまだまだ発展していない地域から東部の沿海地域に再び戻っていく大量の人たちの移動については、相も変わらず中国の報道の定番メニューだろう。ただ、この数億、いや述べ10何億にも及ぶだろう人流の様子は、かつてと比べてだいぶ違ってきたように感じる。

   こうした観点から、改めて今年の春節前後の盛り場を歩いた。最も強く感じたことは「静かになったな」ということだ。北京空港であれ上海駅であれ、ほとんどすべての人たちは手にしたスマートフォンを見ており、かつてのように大声で話し合う声を聞くこともなく、道を尋ねる人すら、いなくなってしまった。アプリが、ある場所に行くにはどうすればいいか教えてくれるスマホが、人と人との会話や教え合いに、完全に取って代わってしまった。会話の相手は身の回りにいる人ではなく、遠くにいる知り合いだったり、または知らない人だったりになった。スマホを通じて。

  • 春節明け、上海駅切符売り場に並びながらスマホに見入る人たち
    春節明け、上海駅切符売り場に並びながらスマホに見入る人たち
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麻雀アプリで、一人楽しむ

   農村労働者の実家がある地域でも大きな変化が起きている。元々文化的な楽しみに乏しかった農村部では、4人知り合いが集まればまず麻雀卓を一緒に囲むことになったものだ。4人集まらなければテレビを見るくらいしかない。だから農村で聞こえるのは、麻雀牌をじゃらじゃらかき交ぜる音か、またはテレビから流れてくる標準語の放送だった。

   だがその麻雀牌の音が聞こえなくなっているという。「スマホアプリで麻雀を一人で楽しむ農村女性」という報道が最近あった。その背景には、Wi-Fiがこのところ農村部にも急速に普及している要因もある。農村でのWi-Fi料金は月に50元(約800円)が相場のようだ。

   その農村で、里帰りしてきたばかりの人と家族の間で、もはや話すことがあまりなくなっているという話を知人から聞いた。彼らは帰郷前、中国版LINEのWeChatで既に毎日会話しているからだ。その日その日にあったことを動画で見せ合ってもいる。年に1度の里帰りで久しぶりに再会するという距離感は、すっかりなくなってしまっているのだ。

   ほとんどの人は実家に着いたなら、やはりスマホを取り出して、遠くの知り合い、または見知らぬ人たちとチャットを始める。コメントもする。自分自身に関することについて、またはまったく無関係の事柄に対して。

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