ちょっと聞きなれない言葉が国会で話題になっている。実質賃金である。もともとと毎月勤労統計の統計不正の追及から出てきたが、アベノミクス「擬装」という流れから出てきている。
2018年でマイナスかどうかが議論されているが、毎月勤労統計では多分わずかのマイナスだろう。ただし、結論を言えば、だからアベノミクスがどうなのかといった程度の話だ。
他の統計からも同種データ入手可能
実質賃金は、概念的には名目賃金を物価指数で割り算して求める。名目賃金は、各雇用者の給与、賞与などであるが、各雇用者に聞くより、事業者の給与などの総額を調べて雇用者数で割って求めるほうが便利だ。
実際、名目賃金であっても多種多様だ。一般的なサラリーマンは同僚の賃金をよく知らないはずだ。給与や賞与は人によって異なるから、あえて知りたくもないだろう。だから、統計として個別の労働者に対して調査することはやらない。そこで、企業、事業所に給与総額などを聞き調査するのが一般的だ。話題になっている毎月勤労統計もこのタイプだ。
となれば、実質賃金は総所得を雇用者数と物価指数で割って得られるわけだ。総所得については、毎月勤労統計の他の統計からも同種のデータを得ることができる。その意味で、各種統計から導かれる国民経済計算(GDP統計)の方がより信頼できる。
2017年の名目雇用者報酬は前年比1.6%増、実質雇用者報酬は1.2%増。18年はそれぞれ3.1%増、2.3%増。18年の雇用者報酬についてみると、名目、実質ともに前年より増加している。
ここまでは、毎月勤労統計の再集計のよるデータ改定として公表されている。そこで、雇用量で割り算して名目賃金と実質賃金を計算してみよう。この「賃金」の定義は筆者独自のものであるが、概念としては間違っていない。
雇用量の伸びは2017年1.2%増、18年2.0%増だった。となると、17年の名目賃金は0.4%増、実質賃金は0%、18年はそれぞれ1.1%増、0.3%増だ。名目賃金は順調に伸びているが、実質賃金は伸びているが伸び率が低い。毎月勤労統計による実質賃金について、18年がマイナスでも別に不思議ではない。