「フリーランス」のメリットとデメリット
日本のようにジム制度のない海外でも、井岡のようにプロモーターと契約してリングに上がる選手がほとんどで、中村のスタイルは世界でも珍しい。このようなスタイルを取ることで選手にとってどのようなメリット、デメリットが生じるのだろうか。
まずメリットだが、ジムまたはプロモーターを通さないで試合を行った場合、ファイトマネーのすべてが自身の懐に入る。日本の場合、ジムのマネジャーはマネージメント料として最大33.3%を選手のファイトマネーから請求することが出来る。海外では選手とプロモーターの契約によりそれぞれパーセンテージが異なるが、ファイトマネーの数パーセントがプロモーターへ流れる仕組みとなっている。
もうひとつ、日本のジムに所属しないメリットとは、JBCが認可していない海外の地域タイトルに挑戦して王座を保持することが出来ること。現在、JBCが認可している団体はWBA、WBC、WBO、IBFの4つだが、海外にはJBCが認可しない地域タイトルが数多くあり、その王座に日本のジムに所属する選手が挑戦して王座を獲得しても王者として認可されないケースがある。フリーランスとしてリングに上がれば、この制約にとらわれることなく海外の地域タイトルに挑戦でき、試合の選択肢がより広がる。
一方のデメリットは、試合を組みにくいことだろう。ノンタイトル戦ならば、それほど多くの契約はないが、世界タイトル戦となれば数多くの項目が契約に盛り込まれる。そのほとんどが英語での契約で、契約の書類をすべて自身でこなさなければならない。海外で試合を行う場合、ビザの取得などが必要となり、これらの事務的作業も同時に行わなければならない。日本の場合、これらはマネジャーが全て請け負うため選手に負担はかからないが、中村はこれらをひとりで行う必要がある。