岡田光世「トランプのアメリカ」で暮らす人たち ベツレヘムの「壁」とメキシコの「壁」

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キリスト生誕の地のイスラム教徒

   私たち夫婦は2018年のクリスマスイヴに、エルサレムからバスに揺られ、イルミネーションが闇夜に輝くベツレヘムの町にたどり着いた。キリストが生まれたとされる聖誕教会に隣接する聖カテリナ教会で、深夜ミサが行われ、世界中から訪れるキリスト教徒らとともに祈りを捧げた。

   クリスマスの雰囲気を感じさせるのは、教会とその前のマンジャー広場周辺くらいで、あとはアラブの世界。ここはパレスチナ内でキリスト教徒が最も多い地域のひとつだが、住民の大多数はイスラム教徒だ。

   宿の主、パレスチナ人のデービッドは、深夜ミサのあと、午前2時近いというのに教会の近くまで車で迎えに来てくれた。宿代には朝食しか含まれていないのに、どの客のためにも彼の妻が栄養たっぷりの美味しい夕食を作り、大きなお盆にのせて温かいまま家族でそろって部屋まで運んでくれた。

   デービッドの親は、ユダヤ人に土地を奪われたという。車で私たちを案内しながら、「ここはパレスチナなのに、あっちにもこっちにもユダヤ人入植地ができた。ベツレヘムを取り囲んでいる。どんどん押し寄せてくるんだ」と吐き捨てるように繰り返した。

「水の量を厳しく制限され、イスラエルを批判することも、自由にここを出ることもままならない。イスラエル兵がやってきて、パレスチナ人を逮捕していくのは、日常茶飯事だ」

   そのあと、私たちだけでベツレヘムの町を歩くと、パレスチナ人たちは口を揃えて気さくな笑顔で、「Welcome.(ようこそ)」と歓迎してくれた。トウモロコシ売りの青年は、「僕らは日本が好きだよ」と夫と肩を組み、写真に収まった。

   店先のテーブルで食事していたアラブ人の2家族は、「一緒に食べろ」とテーブルと椅子を持ってきて、次々に料理を追加注文し始めた。彼らはイスラエルの都市ナザレのそばに住む旅行者で、キリスト教徒だった。50代くらいの女性が、「ここに住むアラブ人たちは気の毒だわ。私たちの地域では、ユダヤ人もアラブ人も一緒に暮らしているのよ」とつぶやいた。

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