プロ野球の春季キャンプが2月1日から12球団一斉にスタートした。昨年に引き続き今年(2019年)も沖縄でキャンプを張る球団が多く、12球団のうち10球団が沖縄キャンプを予定している。
すでにプロ野球の沖縄キャンプはこの季節の風物詩となっているが、今年はサッカーJリーグの19球団が沖縄でキャンプを予定。これに加え韓国プロ野球KBOリーグの7球団が沖縄キャンプを予定しており、キャンプ目当ての多くのファンが沖縄を訪れ活況を呈している。
経済効果、昨年は過去最高
ここ数年、プロスポーツ球団のキャンプが沖縄経済にもたらす効果は右肩上がりとなっている。今年は野球とサッカーだけで26もの球団が沖縄でのキャンプを予定し、昨年を上回る観客数が予想される。プロ野球キャンプによる経済効果を数字でみてみると、2015年は約88億円で、2016年には100億円の大台を突破。以降も数字は上がり続け、昨年は過去最高の約122億円となった。
上記の数字は、キャンプに訪れたファンの宿泊費、飲食費、土産の購入費などから算出されるが、天候にも大きく左右されるという。キャンプの練習は主に屋外で行われるが、雨天で室内練習となれば客足はぐんと減る。幸い、昨年は好天候が続いたため、観客動員数が過去最高を記録し、122億円もの経済効果を生み出したとみられる。
プロ野球では一時期、海外で春季キャンプをはる球団が見られたが、近年ではほとんどの球団が国内でキャンプを実施している。今年は唯一、日本ハムが米アリゾナで第1次キャンプを張り、第2次キャンプを沖縄で行う予定。海外キャンプが敬遠される要因のひとつが時差による調整の遅れ。選手が時差に適応するまで時間を要し、あらかじめ用意したメニューをこなせない事態が起こるためだという。
そこで、国内で時差がなく2月でも温暖な気候の沖縄がキャンプ地として挙がり、現在のようにキャンプ地のメッカとなったわけだが、より多くの球団が沖縄に集中することで球団にとってもメリットは大きい。練習試合の相手に事欠くことなく、韓国の球団との練習試合も可能となる。これは韓国球団にも同じことで、沖縄キャンプの目的のひとつが、日本の球団と練習試合。10球団で構成されるKBOリーグのうち7球団がこの時期、沖縄に集結する。
2020年東京五輪でも注目?
もうひとつのメリットはスコアラーにある。球団が沖縄に集中することで、スコアラーが複数まとめての効率的な視察が可能となる。これは沖縄でキャンプを張る全球団の共通項となるが、スコアラーが視察で得た情報を即日球団に持ち帰り、キャンプ中に対策を練ることも可能に。野球評論家が沖縄の各球団を渡り歩くように、各球団のスコアラーもキャンプ中は沖縄を駆けずり回っているのだ。
最近ではプロスポーツだけでなく、大学の運動部のキャンプ地としても人気を博す沖縄。スポーツチームによるキャンプは、今や沖縄の一つの産業となりつつあるが、海外からは2020年東京五輪の最終調整地として注目されているという。五輪に出場する代表選手のなかには、開催国に入る前に近隣国で最終調整を行ってから現地入りする選手も多くみられる。実際、1988年ソウル五輪、2008年北京五輪の時には、多くの海外選手が時差の少ない日本で最終調整してから現地入りしている。
2020年東京五輪の場合、真夏の開催となるため猛暑対策として、時差がなく気温の高い沖縄は最終調整地としての条件を満たす。2006年には沖縄県と事前キャンプ誘致に賛同する市町村が一体となって、沖縄2020事前キャンプ等誘致推進委員会を設置し、事前キャンプの誘致活動に乗り出している。日本のスポーツキャンプ地のメッカは今、世界的な広がりを見せようとしている。