反旗ひるがえしたデサント、いらだつ伊藤忠 半世紀の仲はなぜ壊れたか

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   スポーツ用品大手のデサントと、筆頭株主の伊藤忠商事が「大げんか」をしている。

   伊藤忠は2019年1月31日、デサント株に対しTOB(株式公開買い付け)を実施し、保有比率を現行の約3割から約4割に引き上げると発表。対するデサントは2月7日、TOBに反対意見を表明し、応募しないよう株主に呼びかけた。日本では珍しい大企業同士の敵対的TOBに発展した格好で、3月14日の買い付け期間までに他の株主がどんな判断を示すのか、注目される。

  • 株式をめぐる戦いが始まった(イメージ)
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「破格」条件で動いた伊藤忠

   仕掛けたのは伊藤忠だった。1月31日午前8時半、東京株式市場の取引が始まる前に、TOBの開始方針を開示したのだ。買い付け価格は前日終値(1871円)より929円高い2800円。TOBの場合、直近の株価の2~3割上乗せが「相場」だから、今回の5割上乗せは「破格」の条件といっていい。

   強硬手段に出たのは、3つの理由があると伊藤忠は説明する。まずはデサントの経営計画未達だ。2016年5月に発表した3カ年計画で、最終年度に当たる2019年3月期の純利益を100億円にすると掲げたのに、主力の韓国事業の低迷で65億円に下方修正した。次にガバナンスの欠如だ。デサントは2018年8月、ワコールと包括的な業務提携契約を結んだが、伊藤忠から派遣している取締役には事前説明がなかった。最後に、経営陣による株式非公開化計画。2018年11月、デサントの石本雅敏社長から、MBO(経営陣が参加する買収)の実施を検討している連絡を受けたが、デサントが多額の債務を負担するスキームで、企業価値が大幅に低下する――という。経営を立て直すには、株を買い増して、圧力を高めるしかないと考えたのだ。

   特に、伊藤忠にとってデサントはスポーツ系の代表的ブランドで、東京五輪も控え、商機をつかみきれないことに、いらだちを強めていったようだ。

創業家の社長復帰とともに関係変化

   だが、デサントは猛反発している。韓国事業への過度な依存については「日本事業も収益力を高め、中国も第3の柱に育ちつつある」とし、伊藤忠の指摘は事実と異なると主張。ワコールとの提携については「取締役会で適法かつ適切な情報提供の上、十分な審議を行った」、MBOについても「具体的な検討には至っておらず、合理的範囲で負債調達を行うことが前提」として、伊藤忠の主張を「恣意的で悪意に満ちている」と非難した。

   さらに買い付け株式数に上限を設けていることから「最小限の資金で、実質的に支配しようとしている」と主張。他にも、伊藤忠の利益を優先した経営体制・方針になりかねない▽デサント、伊藤忠双方から独立した社外取締役、社外監査役の計4人全員が公開買い付けに反対を表明している――と「反伊藤忠」の姿勢を取ることに理解を求めた。

   伊藤忠とデサントとの付き合いは古い。伊藤忠は1971年にデサントに資本参加し、1980年代に筆頭株主となった。米ゴルフウェア「マンシングウェア」の過剰在庫が膨らんだ1984年と、アディダスとのライセンス契約終了後の1998年に、デサントは経営難に陥ったが、伊藤忠は役員を派遣するなどして救済してきた経緯があり、2013年まで伊藤忠出身の社長が3代続いた。

   ところが創業家の石本氏が2013年に社長に就任すると、伊藤忠出身の取締役は代表権を外され徐々に疎遠に。2018年7月以降、伊藤忠がデサント株の保有比率を事前相談なしに25%から段階的に買い増してプレッシャーをかけたほか、伊藤忠の岡藤正広会長兼最高経営責任者(CEO)が石本社長を「恫喝」しているやりとりが週刊文春に報じられるなど、関係はこじれにこじれていた。

   既に3割超の株式を保有する伊藤忠が、重要議案の拒否権を握る3分の1超の株を集めるのは難しくなさそうだ。だが、その後、どのようにデサントを制御していくのかは、みえない。伊藤忠の「力量」が問われている。

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