「救急車内で写真を撮るのは避けて下さい」「救急車は映えスポットではありません」――。産婦人科医の高橋怜奈氏が2019年2月3日、ツイッターでこんな呼びかけをすると広く拡散された。
「そんな事があるんですか...」「なんて非常識」と驚きの声が相次ぎ、中には「これ、救急隊あるあるです」といった反応も上がっている。
「#救急車デビュー」「#救急車で運ばれた」
高橋氏は2月6日、J-CASTニュースの取材に、今回の呼びかけは同氏がSNSでフォローしている人物の投稿がきっかけだったという。
「格闘技をやっている人が試合後、笑いながら、時にはピースをしながら救急車でストレッチャーにのせられて同行者に写真を撮られていたり、減量に失敗して救急車で運ばれている写真が投稿されていたりするのをたまにみかけます。ほかにも、自身で救急車内を撮影した写真もありました」
J-CASTニュース編集部でも確認すると、同様の写真がインスタグラムで複数見つかった。投稿には、「#救急車デビュー」「#救急車で運ばれた」などのハッシュタグが付いている。
高橋氏は投稿の背景を「医療関係でない人にとっては珍しい光景であるため写真を撮りたい人や、自分の病気や怪我を心配されたいという承認欲求が強い人が撮るのだと思います」と分析。また、"SNS映え"狙いの人もいるとみる。
消防庁の見解は?
「私は産婦人科医として救急車に同乗する事がありますが、患者さんをストレッチャーに載せる、そしてそれを救急車に搬送するのは時間が勝負であり、写真を撮る行為自体が医療者側にとっては邪魔であり命とりになることがあります。
また、車内は非常に狭く、揺れて乗り物酔いしやすい状態です。緊急事態で救急車を呼んでいるのに車内で緊急連絡以外で携帯をいじる余裕はないはずです。
写真を撮る余裕があるならタクシーを使ってほしい。写真をとっている人が救急現場ではとても邪魔。写真撮るなら乗らないでほしい」(高橋氏)
総務省消防庁の統計によると、2017年の救急車による搬送は573万6086件(前年比2.0%増)だった。そのうち入院不要な「軽傷」と診断された人は48.6%を占める。
同庁救急企画室は2月6日の取材に、「車内で写真撮影するといった事象は把握していないため、見解は示せない」とした。
(J-CASTニュース編集部 谷本陵)