カブドットコム出資、実現ならどうなる? 次の一手探るKDDIの目算

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   KDDIの狙いはどこにあるのか――。

   東証1部上場のネット証券大手、カブドットコム証券の株価が2019年1月24、25日、2日連続でストップ高水準(制限値幅の上限)まで上昇した。「携帯電話国内2位のKDDIが5割弱、最大1000億円規模出資するためTOB(株式の公開買い付け)に踏み切る」との日本経済新聞24日朝刊の報道を受け、TOB時の上乗せ価格(プレミアム)期待の買いが殺到した。

  • 「非通信」強化図るKDDI
    「非通信」強化図るKDDI
  • 「非通信」強化図るKDDI

MUFGとのグループ力が「強み」

   報道を受けてKDDIが市場に出したコメントは「カブドットコム証券と金融事業においてさまざまな可能性を検討しているが、決まった事柄はない」。「決まった事柄なし」に着目すると否定しているように読めなくもないが、「決定した事実はない」等の文言が発信される時は報道内容を大筋で認めているケースが多い。そのうえ、金融事業でさまざまな可能性を検討していることまで自ら記しているのだから、ほとんどの投資家は「肯定コメント」と受け止めたようだ。

   24日の東京株式市場では情報を確認する必要があるとして一時、売買を停止した。KDDIなどのコメントを受けて再開した後は買い注文が殺到したため、売買が成立しない状況が続いた。終値はストップ高水準で前日比20.9%(80円)高の462円だった。25日はストップ高水準の前日終値比17.3%(80円)高の542円で取引が成立した後、一時525円まで下落する局面があり、終値は541円だった。

   カブドットコム証券は主に個人投資家向けに株式や投資信託の売買仲介サービスを提供しており、ネット証券で国内5位。2007年に三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の子会社となり、現在はMUFG傘下の三菱UFJ証券ホールディングスが52%の株式を保有し、三菱UFJ銀行も6%を持つ。MUFGグループ入りから10年以上経つわけだが、「MUFGのグループ力は同業他社にない強み」(SMBC日興証券)というのが市場の評価だ。

   MUFGとしてもカブドットコム証券が積み上げたノウハウや技術を手放すつもりはない模様で、KDDIの出資は5割弱にとどまる見込みだ。もしTOBということになれば市場で流通する株式はほぼなくなるため、上場廃止になるとみられる。

カブドットコム入れば「手札」そろう

   KDDIは本業の通信ビジネスの稼ぐ力が弱まる中、「非通信」の強化を急いでいる。本業が弱含みなのは、時の官房長官から携帯電話の通信料金が高いと指摘されて値下げ圧力が強まる半面、5G(次世代移動通信システム)のインフラ投資などを怠るわけにはいかないためだ。

   KDDIは非通信の有力分野としてインターネット金融サービスを考えている。2008年に三菱UFJ銀行と折半出資でネット銀行のじぶん銀行を設立したほか、2015年にネット生保のライフネット生命保険に出資した(当初15%、その後25%に買い増し)。カブドットコムが加わることで貯蓄から保険、投資までラインアップがそろう。

   ただ、非通信とは言っても、インターネット金融サービスは通信の上に成り立つサービスでもあり、相乗効果を狙っているのは言うまでもない。KDDIの通信事業には約5300万件の契約があり、この顧客基盤を生かした金融ビジネスを展開したいのだろう。

   ただ、情報技術と金融サービスを結びつけた「フィンテック」は、MUFGにとって今や本業と言える分野だ。それだけに先述したように、MUFGとしてもカブドットコム証券を手放す考えはないとみられている。ならばKDDIとして多額を投じるTOBの末、どのようにカブドットコム証券にかかわるのかに投資家が注目している。いずれにせよ、市場は株価にTOB実施を織り込んでおり、どのような内容のTOBになるかが、株価を動かすことになりそうだ。

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