カブドットコム入れば「手札」そろう
KDDIは本業の通信ビジネスの稼ぐ力が弱まる中、「非通信」の強化を急いでいる。本業が弱含みなのは、時の官房長官から携帯電話の通信料金が高いと指摘されて値下げ圧力が強まる半面、5G(次世代移動通信システム)のインフラ投資などを怠るわけにはいかないためだ。
KDDIは非通信の有力分野としてインターネット金融サービスを考えている。2008年に三菱UFJ銀行と折半出資でネット銀行のじぶん銀行を設立したほか、2015年にネット生保のライフネット生命保険に出資した(当初15%、その後25%に買い増し)。カブドットコムが加わることで貯蓄から保険、投資までラインアップがそろう。
ただ、非通信とは言っても、インターネット金融サービスは通信の上に成り立つサービスでもあり、相乗効果を狙っているのは言うまでもない。KDDIの通信事業には約5300万件の契約があり、この顧客基盤を生かした金融ビジネスを展開したいのだろう。
ただ、情報技術と金融サービスを結びつけた「フィンテック」は、MUFGにとって今や本業と言える分野だ。それだけに先述したように、MUFGとしてもカブドットコム証券を手放す考えはないとみられている。ならばKDDIとして多額を投じるTOBの末、どのようにカブドットコム証券にかかわるのかに投資家が注目している。いずれにせよ、市場は株価にTOB実施を織り込んでおり、どのような内容のTOBになるかが、株価を動かすことになりそうだ。