強者バイドゥが受けた批判 問われる「社会的責任」

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   2019年に入ってから、多くの中国のウェブサイトや中国版ラインのWeChatに掲載され、話題を集めている記事がある。タイトルは、「検索エンジン百度(バイドゥ)は既に死んでいる」(中国語「搜索引擎百度已死」)。

   バイドゥで、ユーザーがあるキーワードを検索すると、まずバイドゥに載った文章が出てくることを、この記事は批判する。まずキーワードで検索し、それに関する記事やコンテンツを読み進めるのが中国人の一般的な習わし。元々の文章が乗ったURLなどではなく、バイドゥへの転載がまず出てくるなら、疑いなくバイドゥへのトラフィックは巨大なものになる。逆に元々のサイトに関連する人たちは、トラフィックがもたらす儲けを手にすることができなくなってしまう。

  • バイドゥのナビゲーションサイト「hao123」の画面
    バイドゥのナビゲーションサイト「hao123」の画面
  • バイドゥのナビゲーションサイト「hao123」の画面

「封建制」の伝統のせい?

   皇帝の下の諸侯たちが自分の領有する地やその地の人々を統治した封建時代。中国では長くそんな時代が続いた。封建制の下では、その地の産業が保護された。河南省新郷市に取材に赴いた際、家電売り場では新郷以外の地で作られた冷蔵庫が並んでいなかったことを思い出す。新郷にはこの地の政府と関係が特に深い冷蔵庫メーカーがあるのだ。つい最近までそんな状況だった。

   ネット時代のいま、電子商取引(EC)は地域を隔てていた壁を一挙に取り崩したものの、バイドゥのような検索エンジンが、相変わらず封建制を採り続けているともいえる。自分たちへのトラフィックを最大にするためで、そこではオリジナルなものへのリスペクトも欠けている。

   それだけではなく、バイドゥで病院を検索すると、バイドゥに宣伝費を払っている病院がまず出てきて、技術力が高い公立病院などはバイドゥで探すことは難しい。こうした構造の下で、これまで、私立病院の詐欺事件も発生しており、バイドゥは社会から責められたこともある。ことは病院に限らず、あらゆる業界で、まず検索結果として示されるのは、バイドゥになにがしかのお金を払っている会社であることが多い。払っていない会社については、何ページも何ページも繰っていってようやく表示される。

不満が高まっているから......

   中国ではグーグルを使えず、その再参入の可能性も不明。ヤフーも基本的に規制されており、様々な検索はバイドゥを使わざるを得ない。検索エンジンとして「捜狗」などもあるがバイドゥには及ばない。社会的責任は大きいはずのバイドゥが、自分たちの利益追求を最優先して、オリジナルの価値や情報の信憑性を二の次にしている――。

   強者バイドゥに対する中国内のそんな不満の高まりが、今回紹介した記事が注目された背景にはある。実際、日本に来て初めて、検索エンジンというものの価値を知った中国人は私を含めて少なくないのだ。

(在北京ジャーナリスト 陳言)

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