サッカーのアジアカップ決勝で日本代表と対戦するカタール代表の2選手が、代表資格を満たしていないとの疑惑が浮上している。複数の現地メディアが報じている。
報道によると、疑惑が指摘されている選手は、スーダン出身のFWアルモエズ・アリ(22)と、イラク出身のDFバッサム・アルラウィ(21)。国際サッカー連盟(FIFA)が定める代表選手の資格に関する要件を満たしていないとのことで、注目の決勝戦を前にして波紋を広げている。
陸上でもアフリカ系選手の移住相次ぐ
FIFAの規則では、国の代表選手になるための資格のひとつとして、「18歳になった後、関係する協会の域内で少なくとも連続5年間にわたって暮らした選手」と定めている。選手の父母が同国の国籍を持つ場合などは、この限りではないとされるが、現地メディアによると、FWアルモエズ・アリとDFバッサム・アルラウィはいずれの条件も満たしていないという。
今回はカタールのサッカー選手に焦点が当たったが、カタールでは陸上競技において他国から多くの選手を受け入れており、物議をかもすこともあった。2000年初頭から海外選手がカタールに国籍を移して代表入りするケースが見られ始めたが、カタール・ドーハで開催された2006年アジア競技大会に合わせるようにしてこれが本格化。アフリカ系の選手が活躍の場を求めてカタールに移住してきた。
男子100メートル、200メートルのアジア記録保持者のフェミ・オグノデ(27)は、ナイジェリア出身で2009年にカタールに移住。現在はカタール代表として大会に出場し、2016年リオデジャネイロ五輪にも出場した。また、実弟のトシン・オグノデ(24)もカタールに移住し、2015年にカタール市民権を獲得している。
過去には「100万ドルで国籍を売った男」も
カタールに国籍を変更した陸上選手で、世界に最も衝撃を与えたのがケニア出身のサイフ・サイード・シャヒーン(36)。世界選手権3000メートル障害で2連覇し、世界記録保持者でもあるシャヒーンは2003年にケニアからカタールに国籍を変更。当時、シャヒーンは国籍を変えたことでカタールから100万ドルを受け取ったとされ、「100万ドルで国籍を売った男」との悪意ある報道も。シャヒーンは後に、国から100万ドルを受け取った事実はないと否定したが、当時はケニア政府、大統領を巻き込んでの大騒動となった。
一部ではカタールは潤沢なオイルマネーで他国から選手を「獲得」しているとの批判もあるが、国の代表選手として国際大会の出場機会を求めて国籍を変える選手も少なくない。ケニアのように世界トップクラスがひしめく国では、世界トップの実力がありながらも国の代表から漏れるという悲劇も生まれる。経済的安定とともに確実な代表枠を確保するための手段でもある。
今回、疑惑が指摘されるFWアルモエズ・アリとDFバッサム・アルラウィは、どのような経緯から国籍を変更したのかは不明だが、陸上ではすでに他国出身のカタール代表選手は一般的になりつつある。スポーツの世界でグローバル化が進むなか起こった今回の代表資格問題。UAEサッカー協会が抗議文を提出したとされるアジアサッカー連盟(AFC)の裁定に注目される。