2018年に歌手生活を引退した歌姫・安室奈美恵さんのイベントで販売されたグッズの「フローティングペン」に、「模倣品」の指摘があがった。デンマークの文具メーカー「エスケセン」の製品と、形状や寸法に加えてロゴマークまで一致していたとして、同社製品の日本での正規輸入会社「レトロバンク」(東京都港区)が注意を呼びかけたのだ。
模倣品と指摘を受けた安室さんグッズの製造販売会社「デコレーションズ」(東京都目黒区)は公式サイトで、「弊社が企画製造したオリジナルの商品となります」と主張していた。だが、J-CASTニュースが改めて取材すると、一連の経緯を説明し、「ロゴマークが酷似していることは事実です」として謝罪した。
「当該品はエスケセン社で製造した正規品フローティングペンではありません」
レトロバンクは2019年1月7日、公式サイトで「安室奈美恵さん『namie amuro Final Space』"フローティングペン"という名称で販売された商品について」との注意文を発表。「"エスケセン フローティングペン"14964型(NEW STYLE)と形、寸法、内部構造、社名ロゴが一致しておりますがエスケセン社製の商品ではございません」と呼びかけ、次のように「模倣品」だと指摘している。
「当該品には上部にデンマーク エスケセン社の会社ロゴを模倣したマークが製品に刻印されています。エスケセン社のロゴマークはエスケセン社で製造された証明として製品に刻印されるものです。しかし、当該品はエスケセン社で製造した正規品フローティングペンではありません」
「MADE IN CHINAおよびESKESEN(編注:エスケセン)社ロゴの刻印がある模倣品のため、ご関係先様各所、コレクターの皆様にご心配をおかけしておりますが、正規品の生産は1951年より変わらずデンマーク王国ストアメルローズの工場のみです」
サイトには、正規品(エスケセン社製品)と模倣品(安室さんのグッズ)を並べた写真を複数枚掲載。デザインが一致しているのに加え、模倣品にはエスケセンのロゴマークも施されているのが分かる。また、正規品は「MADE IN DENMARK」と書かれているのに対し、模倣品は「MADE IN CHINA」となっているが、「中国に工場はございません。ご注意ください」としている。
「エスケセン社とは一切関係はございません」
模倣品と指摘されているグッズは、18年7~9月に東京・大阪・福岡・沖縄の4都市で開催され、安室さんがコンサートで使用してきた衣装やセット、ディスコグラフィーなどを展示したイベント「namie amuro Final Space」で販売されたほか、ネット通販でも提供されていた。
通販していたセブンネットショッピングの商品ページは現在、「これより先はメーカーサイトへ移動します よろしければこちらのリンクよりお進みください」として、グッズ製造販売元のデコレーションズのURLが記載されているだけ。そのデコレーションズのサイトには18年12月29日付で「お知らせ」と題した文章が掲載されており、
「『namie amuro Final Space』で販売されたフローティングペンについて、デンマーク エスケセン社製の商品ではなく、弊社が企画製造したオリジナルの商品となります。エスケセン社とは一切関係はございません」
と「オリジナル」を主張する言葉が書かれていた。
だが、この主張はあまり理解を得られていない。ツイッター上では、
「ペンの形やロゴまで似せていて『オリジナル』という表現はどうなのでしょうか」
「そっくりですね、側だけならまだしもロゴを模倣しちゃまずいですね」
「ロゴまで似せるのはかなり悪質」
と、デコレーションズに疑問を示す声が多数あがっている。
「ブランド価値の毀損となることも懸念」
フローティングペンは、透明なグリップ部分にオイルを入れ、絵柄などを浮かべたもので、ペンを傾けると内部の絵柄が6秒ほどかけて動く機構をもつ。インクが切れても楽しめるペンとしてコレクターも少なくない。その世界的メーカーが1946年にデンマークで創業したエスケセンで、「MADE IN DENMARK」の文字と同社ロゴマークを組み合わせた刻印は、ブランド価値を担保する要素となっている。
そして、エスケセン製品の日本の正規輸入元がレトロバンクである。国内でも著名人や人気キャラクターのグッズ、企業のノベルティーとして多数作られている。コラボの例としては、芸術家の草間彌生さん、シンガーソングライターの小田和正さん、「リラックマ」など枚挙に暇がない。
レトロバンクの担当者は19年1月17日、J-CASTニュースの取材に「エスケセン社から本件についての対応を委任されております。この件については昨年よりデコレーションズ様へ対応のお願いをしておりまして、現在は弁護士を通してお話をさせていただいており、法的措置についても弁護士と協議中です」と現状を明かす。その上で、今回ウェブサイトで注意喚起することにしたのは、
「不良品(虫混入や油漏れなど)のお問い合わせが弊社にあり、この商品がエスケセン社の商品であると誤解されてしまうとブランド価値の毀損となることも懸念しているためです」
と説明。ロゴマークの刻印について、
「デンマークエスケセン社の工場で作ったという正規品の証です。この刻印はこの商品の非常に重要な部分で、有名アーティストさんや企業様はこの正規品か否かを見分けるエスケセンロゴマークが入ることを含めて重要な部分であり、ブランド価値としてOEM製品に採用して下さっております」
と重要性を指摘した。
上記のデコレーションズの発表内容に対しては、
「『オリジナル』という表現を使っておられる件ですが、この商品はエスケセン社のオリジナルマークを使用し、形や寸法が一致します。そのような発表をされてしまいますと、消費者の皆様に更なる混乱や誤解を生じさせるものでありますので極めて遺憾です」
と見解を述べる。「弊社でも今回の件はとても残念で、諸々の事に大変困惑しております」という。
サンプル品チェックで刻印に気付かず
J-CASTニュースはデコレーションズに、「オリジナルの商品」という主張に変わりはないか尋ねた。1月29日に回答した担当者は、今回の安室さんグッズのフローティングペンに用いられている「from namie amuro」のロゴデザインが「弊社オリジナルであるという認識」から、上記のお知らせを掲載したと説明。その上で、
「しかしながら、商標などの法律上の問題は別としても、ロゴマークが酷似していることは事実であり、先般の弊社発表において『オリジナルの商品』という表現を使用したことは誤解を招きかねないものであり、ここに深くお詫び申し上げる次第でございます」
と謝罪した。
ロゴマークが酷似することになった原因については次のように述べている。
「弊社は、日本国内の製造会社を通じて製造工場(海外企業)に本製品の企画製造を依頼しておりました。通常通り、この製造会社は商標等の確認を経てサンプル品を製造しておりましたが、同社からのサンプル品チェックを行う際、弊社が、本製品に上記ロゴマークに類似する刻印がなされていることに気付かず、製造化の指示をしたことが本件の原因となったことは間違いございません」
対応・解決方法をめぐっては現在、レトロバンクと話し合いをしているとし、「商品回収等の今後の措置については、現在、弁護士にも相談の上、何らかの対応をとることが可能かどうかという点も含め、弊社でも検討させて頂いております」と説明。最後に、
「弊社としましては、ご購入の方及び全ての安室奈美恵氏のファンの皆様に多大なるご心配をおかけしたことを改めて深くお詫びするとともに、今後、このようなことが二度と起きないよう、再発防止に全力で取り組んでまいります」
と陳謝している。