安倍晋三首相が2019年1月28日に行った施政方針演説では、日中関係について「完全に正常な軌道へと戻った」と改善を強調する反面、日韓関係に関する言及は消えた。元徴用工をめぐる韓国大法院(最高裁)の判決や、海自機に対するレーダー照射事案など、日韓関係の悪化が背景にある。
この変化には、多くの韓国メディアが反応している。施政方針演説には、基本的には各国について「肯定的なメッセージ」が入るが、こういった「基本的メッセージ」すら入らないほど関係が悪化した、とみる向きもある。
ここ2年は「未来志向で、新たな時代の協力関係」うたっていた
安倍氏は施政方針演説で、外交方針に約11分を割いた。その中で「韓国」の単語が登場したのは、北朝鮮の問題について
「米国や韓国をはじめ国際社会と緊密に連携してまいります」
と述べた部分のみだ。17~18年は日韓関係について
「これまでの両国間の国際約束、相互の信頼の積み重ねの上に、未来志向で、新たな時代の協力関係を深化させてまいります」
と言及し、17年は「韓国は、戦略的利益を共有する最も重要な隣国です」という説明もあった。韓国への言及を年々減らしていることになる。
こういった日本側の対応に、韓国メディアも反応している。その多くが
「意図的に言及を避けた」(朝鮮日報)
といったもの。日韓関係の悪化を背景に、日本側があえて「無視」したという見方だ。中央日報は、演説が日米同盟の強化、中国との関係改善、ロシアとの領土交渉、北朝鮮問題、中東の平和とアフリカ開発支援の問題など幅広い地域について取り上げたにもかかわらず、韓国が取り上げられなかったことを指摘。その上で、東京の韓国外交筋が、施政方針演説は「基本的に相手国に対する肯定・協力的メッセージを入れる」ものだが、「韓国に対しては、そのような基本的メッセージすら送っていない、という意味だ」という見立てを披露した。