大相撲の関脇貴景勝(22)=千賀ノ浦=の大関昇進が見送られた。初場所千秋楽で大関豪栄道(32)=境川=に敗れ11勝4敗に終わった貴景勝に対して、日本相撲協会審判部は大関昇進を春場所以降に持ち越しすることを決定。貴景勝は改めて春場所で大関昇進を目指すことになった。
昨2018年9月の秋場所で貴景勝は小結で9勝止まり。11月の九州場所では小結で13勝2敗の成績で幕内初優勝を果たした。連続優勝の期待がかかる中、初場所の貴景勝の位置付けは、大関昇進の足掛かり場所だった。だが、11日目からの4連勝で賜杯争いにからんできたことで状況が一変。大関昇進の機運は高まり、千秋楽白星で12勝ならば、場所後の大関昇進の可能性もあったという。
型にはまれば敵なしも、まわしを許せば...
大関昇進の目安のひとつは、直前3場所で挙げた白星の数にある。三役以上で33勝が目安となっている。最近の例でみると、栃ノ心(31)=春日野=37勝、高安(28)=田子ノ浦=34勝、照ノ富士(27)=伊勢ケ濱=33勝、豪栄道は34勝で大関昇進を決めている。栃ノ心の場合、3場所前に14勝1敗で平幕優勝を飾っていることから通算37勝という数字になったが、32勝~35勝で大関昇進を決めるのが通例である。
目安となる33勝をクリアした貴景勝はなぜ大関昇進を見送られたのか。その要因のひとつとされるのが、やや安定感に欠ける相撲スタイルである。押し相撲の貴景勝の持ち味は、立ち合いの低い体勢からの強烈な押しにある。四つ相撲相手にまわしを与えずに一気に押し出す、あるいは一度押してから引いて崩すパターンが多い。だが、一方でまわしを取られると何もできずに黒星を喫するケースも見られ、型にはまらなかった場合の相撲内容が大関としては物足りないとの見方もある。
また、角界関係者の間では、初場所の大関陣の低調な成績が少なからず貴景勝の大関昇進に影響を与えているのではとの声もある。初場所は高安、豪栄道、栃ノ心の3大関が出場したが、3日目までに3大関が挙げた白星はわずかに1つ。豪栄道は初日から4連敗、同じく4連敗の栃ノ心は5日目から休場。15日間、皆勤の高安、豪栄道ともに9勝6敗と、「クンロク」大関に終わった。
「基準がハッキリとしないからスッキリしない」
初場所は横綱稀勢の里の引退や、横綱鶴竜の途中休場などがあり、大関陣の低迷ぶりは、その陰に隠れるような形で大きく報道されることはなかったが、3大関は優勝争いにからめず2ケタ勝利もままならない危機的状況にある。カド番の不安ばかりが報じられ、次期横綱候補となる大関が見たらないのが現状だ。
平幕優勝を含む37勝という栃ノ心のレアケースを除けば、2010年5月の把瑠都以降、35勝以上で大関昇進を決めた力士はいない。最多は高安、豪栄道の34勝で、最少は稀勢の里の32勝。過去の例から見てもこの数字は低く、06年から10年の間に大関に昇進した5人の大関すべてが35勝以上の高い数字でクリアしている。
貴景勝の大関昇進は春場所以降に持ち越されたが、ネット上ではこの決定に賛同する声が上がる一方で、昇進の基準に疑問の声も。
「基準がハッキリとしないからスッキリしない」
「基準が不明瞭です」
「明確な昇進条件を決めて明文化するべき。」
「もっと明確に大関昇進の規定を作るべき。」
春場所で貴景勝が2ケタ勝利を挙げれば、直前3場所での34勝以上が確定し、目安の数字をクリアする。