ローマ・カトリック教会のフランシスコ法王は2019年1月23日、19年11月に日本を訪問することを明らかにした。共同通信やAFP通信によると、外遊先のパナマに向かう機内で同行記者団に明らかにした。
実現すれば、法王の訪日は1981年2月の故ヨハネ・パウロ2世以来、約38年ぶり2回目。法王は核廃絶への関心が高く、1981年と同様、広島や長崎を訪問したり、大規模ミサが開かれたりするとみられる。訪日でどういったメッセージを発するかも注目されそうだ。
原爆投下直後の写真を教会関係者に配る
法王は18年12月に前田万葉枢機卿と面会した際、19年に訪日する意向を明らかにしていたが、訪日の決定と具体的な時期を自ら明らかにするのは初めて。法王は、日本にキリスト教を伝えた宣教師、フランシスコ・ザビエルと同じイエズス会に所属。青年期には日本での布教を志願するほどだったが、健康上の問題で実現しなかった。
特に関心を寄せているとみられるのが長崎だ。18年7月の「カトリック教会現勢」によると、全国のカトリック信者数は約44万人で、全人口の約0.3%ほどだ。そのうち約6万人が長崎県に住んでおり、県のの4.4%を占める。17年末には、原爆投下後の長崎で撮影された写真「焼き場に立つ少年」が印刷されたカードに、「戦争がもたらすもの」というメッセージを添えて教会関係者に配ったことが話題になった。
「戦争がもたらすもの」は、米軍の従軍カメラマンだったジョー・オダネル氏(1922~2007)が撮影。唇を固くかみしめ、幼子を背に直立不動の姿勢をとる少年の姿を収められている。亡くなった弟を背負い、火葬の順番を待つ様子だと考えられている。このカードの配布を通じて「核なき世界」の重要性を訴える狙いがあったとみられる。
18年には、国選教育科学文化機関(ユネスコ)が「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」(長崎、熊本両県)を世界文化遺産に登録している。法王は14年のスピーチで潜伏キリシタンに触れて「私たちはこの歴史から、多くを学ぶことができる」と称賛している。
1981年の訪日では、広島・長崎を訪問
1981年の訪日は4日間にわたった。昭和天皇、鈴木善幸首相(当時)と会談し、後楽園球場で3万6000人を集めてミサを開催。広島の原爆資料館を見学したり、長崎の浦上天主堂や大浦天主堂、被爆者が住む養護ホームを訪問したりした。長崎市内の競技場で行われたミサには5万7000人が集まった。19年の訪日でも、核廃絶や潜伏キリシタンに重点的に言及するとみられる。
法王はアルゼンチン出身で、南北の経済格差是正を求めている。「貧しい人々のための境界」が持論だ。
17年12月にローマと東京・上智大学をビデオ会議で結んで行われた高校生との対話イベントでは、日本に対するイメージを質問された法王は、
「理想を持った国民、非常に深い能力を持った国民。これは宗教的にもだ。そして非常に勤勉な国民だ。それから、非常に多く苦しんだ国民」
だと国民性をたたえる一方で、日本が抱える問題として「過度な競争、消費をずっと続けること」を挙げ、これが続けば「自分が持っている力を失わせることになり、大きな問題になる」と指摘した。その上で
「日本は本当に偉大な国だ。私は日本という国を称賛、尊敬している」
と述べた。19年の訪日でも、格差問題に言及する可能性もある。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)