日本側には急ぐ必要はないものの...
為替条項も毒薬条項とも、USMCAに盛り込まれており、日本は基本的に受け入れない方針だが、トランプ政権はUSMCAを今後の通商交渉のひな型と位置付けるだけに、日本にも強く求めてくるのは必至だ。
交渉は2019年1月下旬にも始まると見られていたが、遅れそうな雲行きだ。米政府機関の一部閉鎖で出勤するUSTR職員は通常の半分以下に落ちているといい、米国にとって最大の懸案である米中貿易協議が3月1日までと期限が切られていて、当面はそちらに注力せざるを得ないためだ。1月21日付の朝日新聞(ウェブ版)は、春以降になるとの見通しを示している。
日本は、「元々、進んでやりたい交渉ではない」(通商関係者)。特に、交渉開始を確認した首脳会談の共同声明で「協議が行われている間、この共同声明の精神に反する行動を取らない」と確認しているので、交渉が続いている間は自動車への高関税などの措置は取らないはずだから、急ぐ必要はないわけだ。
しかし、米国は、米国抜きのTPP(11カ国)がすでに発効し、2月には日本・欧州連合(EU)経済連携協定(EPA)も発効する。これにより、日本市場で豪州や欧州の農産品の関税が下がって米国産品より有利になり、米国の農家の突き上げが激しくなるのは確実。また、米国の輸入車への高関税措置に関する調査報告が2月中旬までに提出されるが、大統領はそこから90日以内に発動の可否を判断することになっており、5月に大きな節目がやってくる可能性がある。
日米首脳は6月末に大阪で開く主要20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせて首脳会談を開く見込みで、ここをにらみながらの交渉になるが、トランプ政権ペースで押し込まれる懸念は消えない。