高橋洋一の霞が関ウォッチ
「21世紀の石油」を揺るがす勤労統計不正 根源には人員と予算の不足が

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いまや海外に太刀打ちできない「10万人あたり職員数」

   しかし、その後日本の統計職員は大きく減少した。2018年の各省庁の統計職員数は、内閣府92人、警察庁8人、総務省584人、法務省8人、財務省74人、文科省20人、厚労省233人、農水省613人、経産省245人、国交省51人、人事院12人、計1940人だ。人口10万人あたりの職員数について日本は2人であり、とても海外に太刀打ちできない。

   数だけではない。世界で統計職員といえば、博士号持ちの専門家である。しかし、文系社会の日本では、そうした専門家は偉くなれないので役所に入らない。結果として、日本は統計の量も質も海外に見劣りする。しかも省庁縦割りで農水統計分を他統計に振り替えるという柔軟対応ができない。

   その役所の硬直性は、すぐ全数調査をすべきという文系官僚によくある対応にもでてくる。今回の不祥事は、たしかにルール違反であるが、統計的に見て、全数調査と三分の一の抽出調査はさほど精度は狂わない。

   もし、厚労省の現場が統計の専門家、幹部も統計知識があれば、正々堂々と、抽出調査の正当性・合理性を説明でき、きちんとしたルール改正を行えただろう。そうしたまともな対応ができなかったことこそが大問題である。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「『年金問題』は嘘ばかり」(PHP新書)、「図解 統計学超入門」(あさ出版)など。

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