データは「21世紀の石油」といわれる。これは、世界で議論されているが、プライバシーに直結しない非個人データを流通させ、データ・エコノミーの成長を目指すという文脈で語られている。データ流通のためには品質が重要だが、国家統計は最高のものとされている。
日本では統計法があり、基幹統計として公的統計の根幹をなす重要性の高い統計を56指定している。基幹統計では、統計調査を受ける国民も統計報告を拒んだり虚偽の報告をしたりすると罰則がかかる。もちろん、基幹統計に従事する公務員にも真実に反する行為や機密漏洩などで罰則がある。だから、国家統計は高い品質があるのだ。
関係者の処分だけでは不十分
この大前提を揺るがすのが、今回の厚労省による統計不祥事だ。筆者のように、データ重視の分析者にとっては、信じがたいことだ。
ルールとして、全数調査であれば、そのルール通り行うのはいうまでもない。そのルールに反して抽出調査というのでは、虚偽統計である。もちろん、統計法違反である。
今回の厚労省の不祥事では、関係者の処分がすでに行われているが、再発防止のためには、それだけでは不十分だ。
筆者は、大学時代に数学専攻であり、当時の大蔵省入省の前には、文部省統計数理研究所での内々定もしていたくらいなので、一応統計の専門家である。その目からみると、本件は国の統計職員の人員不足と予算不足が本質的な原因とすぐにわかった。
筆者が、統計問題を意識したのは、2004年頃、経済財政諮問会議で竹中大臣を手伝っていたころだ。その当時、統計職員数は内閣府63人、警察庁6人、総務省590人、法務省10人、財務省85人、文科省20人、厚労省351人、農水省4674人、経産省343人、国交省75人、人事院24人、計6241人だった。
ほとんどの統計職員は農水省であり人員が大きく偏在していたが、国際比較してみると、総数でみれば世界に見劣りしていない。人口10万人あたりの職員数をみると、当時の日本は5人で、アメリカ4人、イギリス7人、ドイツ3人、フランス10人、カナダ16人と比べても遜色ない。