「マスカレード・ホテル」効果も? 東宝の株価が好調な理由

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   国内映画大手の東宝の株価が好調だ。2019年1月18日には一時4200円近くまで上昇、その後はやや下げているとはいえ、4100円前後のラインを推移している。

   15日取引終了後に発表された2018年3~11月期連結決算の内容、同時に公表された自社株買いなどの株主優遇策が評価された。東宝の株式は経営の先行きなどを高く評価する年明け直後の野村証券のリポートによって昨年来高値をつけたが、その高水準を維持し、さらに高値をうかがう展開になっている。

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他社の「ボヘミアン・ラプソディ」も...

   まずは東宝の2018年3~11月期連結決算の内容を確認しておこう。売上高は前年同期比1.0%減の1884億円、営業利益は10.9%減の355億円、経常利益は10.2%減の368億円、純利益は15.6%減の238億円だった。これだけ見るとやや減収、2桁減益ということで良い内容とは言えない。

   ただ、前年同期には2016年に公開した映画「君の名は。」のDVD販売が業績に貢献しており、今走っている期にはその反動減が特に利益の重しになっている。売上高がやや減収で済んでいるのは映画「劇場版コード・ブルー」などが好調だったことが反映しているほか、他社配給ながら伝説のバンド「クイーン」を描いた大ヒット洋画「ボヘミアン・ラプソディ」が映画館収入を底上げしていることが寄与している。一方、12月~2月の第4四半期に、木村拓哉さん主演の邦画「マスカレード・ホテル」(1月18日公開)の興業収入が期待できることも株価を下支えしている。

   決算以外の1月15日の東宝の発表で投資家の関心を呼び寄せたのが、株主還元策だ。「2019年2月期は意外と良さそうだ」ということで年間配当金を前期と同じ45円とし、従来予想から10円引き上げた。さらに、発行済み株式総数の0.11%にあたる20万株、また10億円を上限とする自社株買いを実施すると発表したことが好感され、東宝の株価を押し上げる要因となった。野村証券の担当アナリスト、長尾佳尚氏は2018年3~11月期連結決算などを受けた1月15日付のリポートで「映画事業を中心に業績は好調で、増配及び自己株式取得もポジティブ」と高く評価した。

年明けの不安感の中で存在感

   東宝の株価は前述したように、2018年3~11月期連結決算に先立つ野村証券の1月4日付リポートの効果もあって年初から好調で、1月7日には一時、前週末終値比7.1%(280円)高の4240円をつけ、昨年来高値を更新した。

   その野村の4日付のリポートはというと、投資判断を3段階で真ん中の「ニュートラル(中立)」から最上位の「バイ(買い)」に格上げし、目標株価も3400円から一気に4830円に引き上げるというもの。2020年2月期の営業利益予想も従来の437億円から530億円に上方修正し、最高益を更新すると見込んだ。長尾佳尚氏(前出)は、「配給作品はヒットが期待できる作品が多く、特に映画営業事業の営業利益予想を120億円から153億円に引き上げる。19年は邦画の好調に加え、洋画の好調も期待できるため、映画興行事業の営業利益予想を88億円から147億円に上方修正した」と記した。年明けの日本株は全体として方向感のつかめない流れだったが、主力の映画関連で業績改善が期待できるとあって、東宝株には投資家の買い意欲が高まり、昨年来高値まで押し上げられたのだった。

   足元で株価が上り調子の東宝だが、映画ビジネスは実際に興業を始めてみなければわからないところも多い。同業他社に比べて株価の水準が割高との見方も出始めているだけに、東宝には業績が改善する実績を示していくことが求められている。

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