日中関係が雪解けに向かう中、菅義偉官房長官が2019年1月21日に香港・フェニックステレビのインタビューに応じ、22日に放送された。インタビューは、首相官邸ではなく東京・元赤坂の迎賓館で収録された。
菅氏は、中国人観光客が18年に初めて800万人を突破したことを「ありがたいこと」だと話し、増加する中国人観光客に対応するための人材確保の必要性を強調。留学生が卒業した後の在留資格を拡大する意向を示した。フェニックステレビは中国本土を含め、中国語圏に多くの視聴者を抱える。日中関係改善や訪日客増加に向けた「本気度」を示す狙いがあるとみられる。
800万人超に「ありがたい」、在留資格拡大を表明
日本政府観光局(JNTO)の1月16日の発表によると、18年に中国から日本を訪れた観光客は前年比13.8%増の838万人で、過去最多を記録した。菅氏は、この点について「ありがたいこと」だとした上で、台風21号の影響で関西国際空港に外国人を含む多くの利用者が取り残され、日本語以外ではほとんど情報が提供されなかった問題についても、
「日本にお越しいただいてストレスを感じないような対応をしっかり早急に講じて、いま現実に進んでいるところ」
などとして、多言語対応や充電設備の増強を急ぐ考えだ。
さらに、中国人観光客が増えると、「やはりどうしても、中国語が堪能の方というのは必要」だと指摘。その上で、
「やはりいろんな分野において、頑張ってほしいと思う留学生の方にも、今度新しいビザ、資格を作る。留学生が卒業しても、今まで約3割ぐらいとしか日本で働くことができなかったが、日本で働いていただける方が働いてもらえるという、そういう環境というのはしっかりと作っていきたい」
と述べ、留学生が卒業した後の在留資格を拡大する考えだ。
外国人材に「選んでもらえる国になりたい」
18年12月に可決・成立した改正入管難民法についても、
「外国人材の皆さんは、もう国を選ぶ時代なんだと、そういうことも背景にはある」
「どこで働く、自分たちが働きやすい国を選ぶ、そういう時代だということを私どもが痛切に感じている。選んでもらえる国になりたい」
などと述べた。
中国ではまもなく旧正月(春節、19年は2月5日)を迎えるが、菅氏も幼少期には秋田県で、当時の地元の風習として「旧正月」を祝っていたことを明かし、
「今年は日中友好の素晴らしい発展の年になるように、と思っているので、是非日本にも多くのみなさんにお越しいただきたい」
と呼びかけた。
インタビューは菅氏が執務する首相官邸ではなく、東京・元赤坂の迎賓館にある和風別館で行われた。米国のトランプ大統領が17年11月に訪日した際、コイにエサやりをした際の豪快ぶりが話題になった場所だ。迎賓館の総務課によると、ぶらさがり取材ではない正式な形で和風別館でインタビューが行われるのは、今回が初めて。菅氏は16年にも、迎賓館の洋館でフェニックステレビのインタビューに応じている。
迎賓館は有料で一般公開されており、英語のガイドツアーもある。インタビューで紹介してもらうことで、外国人の見学者を増やす狙いもあるとみられる。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)