「計画的な防戦」の実態
今回の試合を見ていく。まずサウジアラビアの攻撃を「ボールポゼッションとビルドアップ(=ラストプレーまでのボール運び)は極めて組織化されていました」とする一方で、「中央突破の方法をほぼ持っておらず、サイドからの攻めに偏っている」ことと、「相手ゴール前までボールを運べてもなかなか決めきることができないというデータが出ていた」ことを指摘する。
これに応じて「やられたら一番イヤな戦術」を考えていく。日本の守備は「ビルドアップのポイントを抑えてプレッシャーを与え、自由なボール運びをさせない」ことと、「サイドからクロスを送られても、ゴール前の守備の準備が整っている状態で待ち構えられるようにする」ことが基本線だったと分析。さらに、ボールを奪ってからの攻撃は「攻め上がっているサウジアラビアのサイドバックの裏に空いたスペースを突くカウンター」を狙いながら、「高さ(上背)で上回るのを生かしたセットプレー」にもチャンスを見出していたとみている。
実際、上記のようにシュート数はサウジアラビアの方が多かったものの、「枠内シュート数」だけで見れば、日本が2本に対し、サウジアラビアは1本どまりだった。中央で固める守備組織が機能していたと見ることも可能だ。
試合が動いたのは前半20分。実際にセットプレー(CK)からDF冨安健洋(20)が先制点を奪った。これがその後の試合運びを強く方向付けたと、五百蔵氏は考えている。
「0-0の状況が長く続けば、日本はもう少し高い位置でサウジアラビアにプレッシャーをかけ、ボールを奪う試合運びを選択したと思います。けれども、狙っていたセットプレーで早い時間に先制できたので、その必要が無くなりました。
日本は、サウジアラビアを日本の陣地に計画的に引き込み、先ほども言った『サイドバックの裏のスペース』を可能な限り広く、長く空けさせてカウンターをし、時間を使う――という試合運びを選択しました。これが、サウジアラビア戦での日本代表の『計画的な防戦』の実態と思われます」