「出口戦略」模索したかに見えたが...
日銀は黒田総裁就任の2013年春から「異次元緩和」に着手し、物価目標「2%」を掲げて「2年で達成」をめざしてきた。だが、物価の歩みは鈍く、2018年に総裁任期2期目に入っても実現のメドは立たない。この間、「量的緩和」として国債の「爆買い」、さらに株価連動投資信託(ETF)の大量購入に手を広げ、日銀の購入で国債の流通量が落ちて限界が近づいてくると、2017年9月には「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)付き量的・質的金融緩和」、つまり「量から金利」へ政策の軸足を移し、国債買い入れを減額し、長期金利(直接には10年物国債)の利回りを0%に誘導することを政策の中心に据えた。さらに、ゼロ金利で金融機関が利ザヤ(貸出金利と預金金利の差)を稼げなくなって経営が打撃を受けるという「副作用」への批判の高まりを受け、2018年7月には、許容する長期金利の変動幅を、「プラスマイナス0.1%」から「同0.2%」程度へと2倍に拡大する「政策修正」を実施した。わずかながら金利上昇を容認し、市場機能の改善を試みたのだ。
世界的には欧米が量的緩和を打ち止めにし、特に米国はいち早く金利引き上げを進めている。デフレからの脱却が遅れる日本が取り残されている形で、日銀は「デフレが終わるまで緩和を続ける」と言い続けている。ただ、前述の副作用が無視できず、物価上昇率も、足もとで1%程度と低迷を脱するめどが立たない――こんな事情が2018年7月の日銀の政策修正の背景というわけだ。
日銀の狙いは、うまくいくかに思われた時期もあった。長期金利は8月に0.12%、10月には一時、0.15%台をつけ、黒田総裁は11月の講演で「かつてのように、大規模な政策を思い切って実施することが最適な政策運営と判断された経済・物価情勢ではなくなっている」と踏み込んだ発言をしている。黒田総裁は「2%の物価上昇目標達成が最大の使命であり、出口を議論するのは時期尚早」との立場は堅持するが、市場では「日銀が『出口戦略』にソロリと動き出した」(エコノミスト)との見方が強まろうとしていた。
しかし、貿易をはじめとする米中摩擦の激化を受け、景気悪化への懸念が拡大すると、長期金利は急低下して7月の政策修正前に逆戻り。株価が急落した年末、年始には一時、マイナス0.04%程度に沈む場面もあったほどだ。
2019年はどうなるか。