カワウソをモチーフにしたゆるキャラ「ちぃたん☆」は、ユーチューバーとして過激なパフォーマンスを繰り返し、ツイッター上などで人気を集めている。
ところが、高知県須崎市のキャラ「しんじょう君」と酷似しているため、「危ないことをして、何のPRなのか」などとクレームが相次いでおり、市が困惑している。双方の「言い分」を聞いた。
ちぃたん☆は、観光大使を自称し、市も黙認
ユーチューブ投稿の動画などを見ると、「ちぃたん☆」は、見かけとは裏腹に、まったくゆるくないチャレンジを次々にこなしていく。
車を横倒しにしたり、草刈り機を振り回したり、子供たちに追われて公園の噴水に頭から突っ込んだりもする。そんな無茶ぶりが毎回大きな話題になり、チャンネル登録者は、27万人超にも上っている。
もともと、「しんじょう君」の方が活動歴は長く、2016年には、ゆるキャラグランプリで優勝して一躍脚光を浴びた。須崎市の元気創造課によると、翌17年に対馬でニホンカワウソ発見かと報じられたのをきっかけに、ペットとして個人が飼っているメスのコツメカワウソと接点が生まれ、市が18年1月に観光大使に委嘱した。
このカワウソと同名のゆるキャラ「ちぃたん☆」は、大きくなって妖精になったという設定で、しんじょう君と同じデザイナーが手がけて17年12月に生まれた。東京・秋葉原出身だとうたい、キャラ作りは、アイドルグループ「仮面女子」も所属しているクリーブラッツが手がけている。観光大使を自称し、しんじょう君ともイベントで共演するなど、市も黙認していた。
ところが、ちぃたん☆の過激動画がネット上で広まると、市には、しんじょう君と間違えるなどして、クレームが19年1月16日までに100件超も寄せられた。
市は、ペットのカワウソについて、「観光大使を1年やって、PRの実績が確認できない」と判断し、17日付で大使を解任した。ちぃたん☆も、これを受けて、ツイッターのプロフィールなどから、観光大使の表記を削除している。
海外の「商標」を市は懸念
とはいえ、観光大使を解任したとしても、ゆるキャラがしんじょう君に酷似している以上、今後もトラブルが予想される。須崎市元気創造課は1月16日、「市のキャラと間違えられることもあって、非常に困っています」とJ-CASTニュースの取材に答えた。
同課によると、ちぃたん☆を手がけるクリーブラッツは、海外進出に備え、韓国やアメリカで商標登録も済ませた。しかし、しんじょう君は、アニメ化され、19年秋に日本のほかアジア各地で上映を予定している。市は、韓国や中国、台湾でしんじょう君の商標登録をする準備をしており、「そっくりだとして、各国で登録申請を却下されたら困ります」と漏らす。
後発のキャラに食われる形になるのを心配しているわけだ。
観光大使解任を伝えるニュースのコメント欄などでは、市の対応について、賛否両論が出ている。
賛同する声としては、「PRくらいやってやらんとなぁ」「面白くてウケればよいってわけじゃない」といった書き込みがあった。一方で、「須崎市は一体何を過敏になっているんだ」「ちぃたんのが知名度も人気も上だろう」などの指摘も出ている。
ちぃたん☆は、18年12月から関連会社のキャランドゥが運営し、キャラ作りの委託先がクリーブラッツになっている。市が誤解を受けて困っていることについて、キャランドゥは19年1月18日、「ご迷惑をお掛けして本当に申し訳ありません。大使ではありませんがしんじょう君、須崎市が大好きなのでこれからも応援させていただきたいですし、お役に立てることがあればさせて頂きたいです」と取材にコメントした。
商標登録の件については、「複数のメディア様にご回答し弊社のお伝えしたいことが分散することは避けたいので申し訳ありませんが未回答で御願いします」とした。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)