なぜ、いま語りたいのか
それぞれの著者に共通するのは、東大闘争についての強く深い思いだ。回顧録には実名や仮名で多くの関係者も登場、いろいろ興味深いエピソードも出て来る。
「語られることがなかった、あるいは、誤って語り継がれた東大闘争の真実を・・・当時の感覚が微かにでも残っているうちに...書いておきたい」(和田氏)
「私の語り得る限りの記録を残すことで、全共闘運動とは何かと言う疑問に対する、私なりの返答として書いたものです」(大野氏)
50年という歳月も節目になっている。「当事者の年齢というか元気さ加減を考えると、書く方も、最大の読者層が読んでくれるのも最後かなという気がした」(富田氏)。
こうした当事者の回顧録のほかに、多数の東大関係者らにヒアリングした研究書も昨年刊行されている。『東大闘争の語り』(新曜社)だ。著者の小杉亮子さんは社会学者で日本学術振興会特別研究員(PD)。当時の東大生35人を含む44人が実名や匿名でインタビューに応じている。1人について1~8時間、なぜ社会的関心を持つようになったか、個々人の生活歴や「闘争後」についても踏み込んで聞いている。
回顧本は日大関係でも昨年、芸術学部闘争委員会の委員長だった眞武善行さんが『日大全共闘1968叛乱のクロニクル』(白順社)を出版、そのほか全共闘のメンバーだった三橋俊明さんが『全共闘、1968 年の愉快な叛乱』『日大闘争と全共闘運動――日大闘争公開座談会の記録』(ともに彩流社)を出している。
また全共闘運動の導火線になった1967年の羽田事件については、『かつて10・8羽田闘争があった――山崎博昭追悼50周年記念』(合同フォレスト)が寄稿篇と記録資料篇の二分冊で刊行されている。