2019年1月16日、大相撲の横綱・稀勢の里が引退を表明した。1月13日から始まった大相撲初場所(東京・両国国技館)で、進退をかけて臨んだが、初日から3連敗。16日朝に「現役引退」を表明した。
J-CASTニュースは初場所前の18年12月、好角家としても知られる漫画家・やくみつる氏に、稀勢の里の進退問題について話を聞いていた。
琴桜に前田山...稀勢の里も同じく「到達型」の横綱だった
稀勢の里は18年11月場所、初日から4連敗して、途中休場となった。その後に出てきた「進退問題」について、やく氏は当時、
「長くはないな...とは、思っていました。(亡くなられた)琴桜、戦後の前田山といい、横綱になった後の成績は惨憺(さんたん)たるものでしたよね」
と話していた。実際、稀勢の里が横綱に昇進してからの成績は「36勝36敗97休」(19年1月16日現在)と、理想の横綱像とは、かけ離れた成績だった。
しかし、やく氏は、
「(苦労の末に)ようやく横綱になった。ようやく、辿り着いた。十分、評価に値するんじゃないですか? 頑張った証ですから。本人は、そうは思いたくないでしょうけど、それはそれで評価できる」
続けて、
「(左上半身の)ケガを治しているうちに、下半身が軽い感じになってしまった。(元横綱)曙と同じで、上半身が重い反面、下半身の強化がついてこなかった。これは『晩年のお相撲さんだな...』と思いましたね」
と、ある種の「日本人離れ」した体格が相撲人生を縮めてしまった要因だとも分析する。
稀勢の里は「遅咲き」タイプ
やく氏によると、横綱になるパターンは「早咲き」「遅咲き」の2パターンがあるという。
「横綱になるには、出世街道を驀進(ばくしん)するパターンと、苦労して、苦労してなれるパターンと。(稀勢の里は)遅咲きで、咲いて横綱になった。あとは、しぼむだけですから。横綱に上がったことが『仕事』だったんですよね。(いい意味で)裏切ってくれればよかったんですけど。でも、それによって、稀勢の里の評価が変わるものではありません」
16日に会見を行った稀勢の里は「(相撲人生に)一片の悔いもございません」と語った。今後は年寄「荒磯」を襲名、後進の指導に当たる。しばらくは、ゆっくり休んでいただき、第2の「たたき上げ力士」を育てることを期待する。
(J-CASTニュース編集部 山田大介)