テニスの全豪オープン第2日が2019年1月15日、オーストラリア・メルボルンで行われ、男子シングルスで世界ランク9位、第8シードの錦織圭(29)=日清食品=が、世界ランク176位カミル・マイクシャク(23)=ポーランド=の途中棄権で2回戦に進出した。第1、第2セットを立て続けに落とした錦織は、第3セットを6ゲーム連取して奪い返し、第4セットを6-2まで追い込んだところで相手が棄権を申し入れた。
まさに薄氷の勝利だった。第1セット、錦織は第1ゲームと第5ゲームでそれぞれブレイクチャンスを作るも取り切れず、第6ゲームでブレイクを許し3-6で落とした。続く第2セットは互いに1ゲームずつブレイクし、タイブレイクまでもつれこんだが、ここも取り切れなかった。
第3セットに入ると、マイクシャクの動きに明らかな異変が見られはじめる。脱水症状からくるものなのか、マイクシャクの右腕と足がつりペースダウン。動きの鈍いマイクシャク相手に錦織は6ゲーム連取でゲームを取ると、第4セットも6-2まで追い込んだ。最終セットで3-0となった時点でマイクシャクが体の痙攣による棄権を申し入れたため、錦織の勝利が確定した。
「正直、かなりビックリはあった」
試合中にラケットをコートにたたきつけるなど、無名選手相手の苦戦にいら立ちを隠さなかった錦織は、「正直、かなりビックリはあった。内容的には世界ランク50、30位以内にいてもおかしくないテニスをしていた」と世界176位のプレーに素直に驚きを見せつつ、自身のプレーについては「100点ではなかったが70~80点はできていた」とプライドをのぞかせた。
シーズン開幕直後に開催される全豪OPは、「荒れる全豪」の異名をとるほど毎年のように番狂わせが起きる。この日の錦織はマイクシャンの棄権によって難を逃れたが、14日に行われた男子シングルス1回戦で、世界ランク10位、第9シードのジョン・イスナー(33)=米国=が、同97位のライリー・オペルカ(21)=米国=に敗れる波乱が起こっている。
2015年には、全豪4度の優勝を誇るロジャー・フェデラー(37)=スイス=が、3回戦で世界ランク46位アンドレアス・セッピ(34)=イタリア=に敗れる波乱が。2016年はラファエル・ナダル(32)=スペイン=が、全豪初となる初戦敗退。2017年には世界ランク2位のノバク・ジョコビッチ(31)=セルビア=が、同117位のデニス・イストミン(32)=ウズベキスタン=に敗れた。
気候に加え、トップ選手には「不利」も
2018年、「荒れる全豪」の象徴的な存在となったのが、韓国の新星・鄭現(22)だ。世界ランク58位だった鄭現は、当時世界ランク4位アレキサンダー・ズベレフ(21)=ドイツ=、ジョコビッチ(セルビア)ら世界トップクラスの実力者を相次いで撃破し、韓国人初のグランドスラム4強入りを果たした。
全豪が「荒れる」理由はいくつかあげられる。そのひとつとして挙げられるのが気候である。南半球に位置するオーストラリアで開催されるため、北半球に生活圏を置く選手にとっては季節が真逆となる。この時期のオーストラリアは真夏で、気温が30度を超す猛暑が続くため、北半球の選手にとって調整が困難だといわれている。
また、世界のトップ選手が序盤で姿を消すことが多い要因のひとつとして、過密スケジュールが挙げられる。世界のトップ8選手はツアー最終戦まで戦い抜くため、オフの期間が他の選手と比べてかなり短いものとなる。前年度のツアーでの疲労が抜けきる前に全豪を迎える選手もおり、これが影響して世界トップ10に入るような選手が実力を出す前に敗れるケースが見られる。
あわや「金星」献上の危機にさらされた錦織の次戦は、世界ランク73位イボ・カロビッチ(39)=クロアチア=。2016年全米OP以来の対戦となるカロビッチ戦について「久しぶりの対戦。あまり好きな相手ではない。調子がよさそうなので、なるべくリターンや自分のサービスゲームでしっかりプレーできるように意識したい」と気を引き締めた。