「(栃東は)強くなったか?」→「うん、うれしかった」(若乃花)
貴乃花の実兄である3代目横綱若乃花の最後の相手も印象的だった。2場所連続休場明けで臨んだ2000年3月場所。4日目まで2勝2敗で迎えた5日目の対戦相手は栃東だった。明大中野高の後輩で、栃東が入門当初からかわいがっていた。その栃東に敗れた若乃花は土俵上で一瞬、天を仰いで土俵を降りた。
支度部屋で報道陣から「(栃東は)強くなったか?」と質問されると、若乃花は「うん、うれしかった」と応じた。すでにこの時、引退を覚悟していたのだろう若乃花は、自身の引退よりも後輩の成長を喜んでいるようでもあった。この数時間後、若乃花は引退を表明した。
角界において絶対的な存在である横綱は、そのほとんどが自身の去就を自身で決してきた。稀勢の里も3連敗を喫すれば、その選択を迫られる。3日目の栃煌山とは、初土俵こそ稀勢の里が先だが同級生であり、その同級生が最後の相手となるのか。それともここから起死回生の復活はあるのか。いずれにせよ、3日目は稀勢の里にとっての大一番となる。