日本から出国する際、国籍を問わず1人1000円を負担する「国際観光旅客税」の徴収が始まった。事実上の「出国税」に当たる制度で、国税としては1992年の地価税以来、27年ぶりの新税となった。政府は年間約500億円の税収を訪日外国人旅行者の誘致に使うというが――。
国際観光旅客税は2019年1月7日以降、日本から出国する外国人はもちろん、日本人も課税対象となる。観光客だけでなく、ビジネスや留学などで出国する人も含まれる。
国交省主導で誕生した新税
国際線で入国後24時間以内に出国する乗り継ぎ客や2歳未満の幼児、航空機や船舶の乗員、外交官などは対象外で課税されない。
新税は文字通り出国の際に課税される制度だが、実際には日本から海外に向かう国際線の航空機や船舶のチケット代に上乗せして徴収する。新税の創設を主導したのは財務省ではなく、観光庁をもつ国土交通省だ。2017年8月に「次世代の観光立国実現のための財源」として財務省に創設を要望。同年12月の与党税制改正大綱に盛り込まれ、2018年4月に国会で可決、設立した。政府・与党にすんなりと認められたのは、安倍政権が「観光立国」を目指し、訪日外国人旅行者の誘致をアベノミクスの経済活性化の柱の一つに位置づけているからに他ならない。
出国時の旅客に課税する制度は韓国、台湾、中国、香港、オーストラリア、英国などにあり、香港と英国は一般財源としているが、韓国、台湾、中国などは観光振興に使っている。これに倣い、政府は新税を訪日外国人旅行者誘致の環境整備に使うとしている。
具体的には、(1)空港の自動チェックイン機や顔認証ゲートの設置など出入国手続きの時間短縮(2)日本の魅力を海外に伝える訪日プロモーション(3)観光地の多言語解説など「観光資源の整備」――の3分野に使うことが決まっている。