中国の政策にはひとつの特徴がある。一度作られれば、それに疑いを抱くことができなくなるのだ。当局批判とみられかねないため、「改善策」を提起する声が上がりにくい。相当深刻になっている中国の人口問題についても、この特徴は顕著だ。
中国社会科学院人口労働研究所は2019年1月3日、「中国の人口と労働問題報告」を発表した。そこでは、中国の人口が2029年に14億4200万人のピークに達し、2030年から減少するだろうと予測。一人の女性が生涯に産む子どもの数にあたる出生率(合計特殊出生率)が現在の1・6の水準に留まるならば、人口は2027年から減り始め、2065年の人口は11億7200万人にまで減るとも予測した。これは1990年の水準にあたる。
「人口激増」の予測は外れた
この40年間、中国の人口政策は増加抑制が主な内容だった。人口政策を担当する国家衛生計画生育委員会の力は強く、ネットワークは全国的で、関係官僚や業界も数多い。このため、「人口制限政策の厳守」という慣性がいまだに強く働いているともいえる。
2016年、「一人っ子政策」が撤廃され、すべての夫婦に2人目の子どもを認める「二人っ子政策」が実施された後には、当局に近い研究者は「人口が激増する」と予測した。
実施翌年の2017年には、新生児の数は元々の予測の1770万人から最大2195万人にまで増え、2018年には同じく1724万人から2294万人にまで増えるだろう......。
そう見たのだが、実際の数字は予測とかなり違った。
2017年の新生児数は1758万人で、前年より88万人減った。2018年の数字は未発表ながら、人口問題を長年研究してきた民間研究者、梁建章、黄文政両氏は「2018年の全国の出生者は前年よりも驚くほど減った」とみる。
二人は、江蘇省、浙江省、山東省など、沿海部の新生児数も個別に調査した。それによると、昨年上半期、江蘇の新生児は前年同期比12.8%減った。以下、福建は17.2%減、浙江17.9%減、山東省聊城県26.3%減。減り方はいずれも衝撃的だった。
これらの調査結果に基づいて、2018年の出生数は当局予測よりもはるかに大きく減った可能性があるとみるわけだ。