「本麒麟」好調なのに... キリンHDの株価は何故さえないのか

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   2018年、ビール系新商品として最大のヒットとなったのが、第3のビール「本麒麟」だ。3月の発売以降、12月中旬までに3億本を販売、「こだわり」ある味わいが消費者から好評を得ている。

   ところがその「本麒麟」を手掛けるキリンホールディングス(HD)の株価は、低落傾向を抜け出せずにいる。株式市場全体が弱気モードにある中ではあるが、先行きのさまざまな不安材料が株価をさらに押し下げているようだ。

  • 好調な「本麒麟」だが…(キリン公式サイトより)
    好調な「本麒麟」だが…(キリン公式サイトより)
  • 好調な「本麒麟」だが…(キリン公式サイトより)

トップのアサヒに猛追するが...

   年末も押し迫った3連休明け2018年12月25日の東京株式市場は、米国市場の急落を受けて全面安の展開になり、日経平均株価はクリスマス気分も吹き飛ばすように、一時、前週末終値比1048円23銭(5.2%)安を記録(終値も1010円45銭=5.0%安)。キリンHDもこの大波に押し流され、一時156.5円安の2203.5円まで下げて年初来安値を更新した。その下落率は6.6%で日経平均より大きかった。終値も143円安の2217円と、下落率(6.1%)は日経平均を上回った。終値はアサヒグループホールディングス(5.8%安)、サッポロホールディングス(3.8%安)と比べても下落率が大きく、投資家に投げ売りされるような状況だったことがうかがえる。

   その後、26日に2163円まで下げた後、年明けは2300円台半ばまでは戻してきたが、市場全体が不安定なこともあって、先行き不安はぬぐえない。

   キリンHDの下げがきつい原因はさまざまあるが、国内のビール系飲料市場のシュリンクが止まらないことはその一つだろう。2018年の年間データは2019年1月に発表される予定だが、業界では14年連続で前年割れとなることが確実視されている。

   国内シェアはビール「スーパードライ」が根強い人気のアサヒGHDが2010年以降、首位の座にある。しかし2位のキリンHDは第3のビール「本麒麟」のヒットをテコに肉迫し、逆転の可能性を指摘する向きもある状況だ。

アサヒとの違いは?

   ところが、近年の欧州事業買収で海外比率を高めるアサヒGHDに比べて経営上、国内ビール系飲料のインパクトが大きいキリンHDにとって、ビール市場縮小は株が売られやすい材料になる。

   9月7日というと、少し前になるが、SMBC日興証券はキリンHD株の先行き不透明感を指摘し、投資評価を格下げするレポートをまとめている。それまで3段階でいちばん良い「1」(アウトパフォーム)だったものを真ん中の「2」(中立)に下げ、目標株価も3600円から3000円に引き下げた(当時の株価は2600円台~2900円台)。レポートはキリンHDが「競争激化を引き起こす低価格品の強化やプライベートブランド(PB)生産の受託を始めている」と指摘し、「ビール業界の競争の構図が変わり始めた」との懸念を示す。さらにこのままでは「(事業子会社)キリンビールの利益成長が止まる」と踏み込んでいた。この指摘が投資家の意識に影響を与えている可能性もある。

第3のビール「ヒット」に投資家不安

   ビールより安い第3のビール「本麒麟」が年間販売目標を2度引き上げるヒットとなったことも、イオンなど流通大手から製造を請け負うPB商品に力を入れていることも事実だし、そのことがキリンHDの国内ビール系飲料市場のシェアを押し上げている。低所得の消費者にとってはありがたいことだが、株式市場的にはキリンHDの利益を押し下げると見るわけだ。また、キリンに限った話ではないが、2017年6月の酒税法改正による安売り規制でビールの店頭価格が上昇し、相対的に割安なチューハイに消費者の手が伸びていることも株式市場的には思わしくないできごとに映る。

   それではキリンHDの株価が反転上昇するきっかけは何か。国内市場はシュリンクが続く一方、海外展開は高い授業料を払って撤退した歴史を持つキリンHDにとって鬼門。市場では「医薬事業を伸ばすなど思い切った改革が必要」などの声が聞かれる。

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