「あれがキーパーのミスだと...?」――アジアカップのグループリーグ初戦・日本代表対トルクメニスタン代表戦(3-2)で、2失点目につながるPKを献上したシーンでの松木安太郎氏(61)の解説が、インターネット上で物議を醸した。
テレビ朝日の中継で解説をつとめた松木氏は、「自分のミスですからね、権田」とPKを与えるファウルをしたGK権田修一(29)を名指し。だが、ここに至るまでの「流れ」を見ていた人々の多くは、違う捉え方をしていたようだ。
「権田のミスとかマジで言ってんのか?」
森保一監督になって初の公式戦となるアジア杯。2019年1月9日に行われたトルクメニスタン戦は、前半に先制点を許すも、後半にFW大迫勇也(28)の2得点で逆転、さらにMF堂安律(20)の大会史上最年少ゴールで追加点を奪い、2点差をつけた。
問題のシーンはここから。後半33分、権田は、フリーでスルーパスを受けたFWアンナドゥルディエフとの1対1で、とっさに足元へ飛び込みファウル。イエローカードをもらうとともにPKを献上した。
試合終盤でのピンチ。キッカーを見据えてゴールマウスに立つ権田。ここで解説者の松木氏が放ったのは、
「自分のミスですからね、権田。相当集中していると思います」
という言葉だった。これに中継を見ていたツイッターユーザーが敏感に反応した。
「松木さん 権田のミスとかマジで言ってんのか?」
「PKを与えたのは権田のミスだというような地上波中継の発言には衝撃と落胆。あれがキーパーのミスだと...?」
「あの一連の流れを『権田のミス』という表現は断じて為されるべきではない」
PKのファウルに至った流れ
どんな流れだったのか。数十秒前から振り返ると、ハーフウェイライン付近でキープしていたFW北川航也(22)が相手2人に囲まれ、パスを出す先が見つからず、ボールをロスト。こぼれ球に対し、相手選手はワンタッチでゴール前に送る長いスルーパスを選択した。
虚を突かれた形となった。センターバック(CB)のDF吉田麻也(30)とDF槙野智章(31)はラインの高さも合っておらず、2人の間にはポッカリとスペースが空いていた。ゴール前へのパスコースのカットも遅れた。ここに走り込んだアンナドゥルディエフがスルーパスを受け、上記の1対1が生まれていた。試合中すでに何度かやられていた相手のショートカウンターに、日本の守備組織は上手く対応できなかった。
こうした状況を「自分(権田)のミス」で片付けられたことに、試合を見ていた人々は疑問を抱いたようだ。ツイッターでは、
「PK判定に間違いはないだろうし、北川のボールロストの状態が悪く、誰もカバーに入れずにCBの間に通されてCBは対応出来てない、権田はGKとして距離詰めてチャレンジしたけど、切り返されてPKのコンタクト。試合の流れで見たけど、これで権田だけ責任取られるのは酷よ」
「権田のPKシーンのところ確かに権田のミスよりも守備陣のザルさを責めるべき」
「容認できる範囲というものがあり、あの一連の流れを『権田のミス』という表現は断じて為されるべきではない」
などと一連の流れに触れながら物申す声も数多い。
絶体絶命のピンチに対し、ファウルしてでも一旦プレーを止めに行った権田について「即失点状態だったのをPKで防げるかもしれない状態に持っていった」と見る向きもある。
W杯の「川島叩き」思い出す声も
元U-20ホンジュラス代表GKコーチ・山野陽嗣氏はツイッターで、「あんなどフリーで1対1で来られてる時点で失点は免れないほどのピンチですから。『なぜ、そこまで行かれたのか』そこに言及して欲しかったですね。まさか権田選手の『ミス』と言われるとは、思ってもみなかったです...」と胸中を吐露している。
半年前のロシア・ワールドカップ(W杯)で、失点シーンをめぐって正GKだった川島永嗣(35)への批判が最後の最後まで殺到したのは記憶に新しい。チームを救うファインセーブもあった中で「ミス」の議論が過熱していた。トルクメニスタン戦の権田も、あわや失点というピンチを防ぐ場面は少なくなかった。当時を思い出したサッカーファンもおり、「Wカップじゃ川島叩かれるし、昨日のPK取られたシーンでも『権田のミス』なんてGKひとり悪者にされるし、GKを取り巻く環境が劣悪ですからね、我が国は」と溜め息も漏れている。
ただ、「権田のPK献上もう少しやりようなかったのかなと思っちゃうな」「PKは権田が出すぎ」などと、結果としてPKを与える直接のプレーをした権田を責める向きもある。また、松木氏の言葉についても、
「選手の気持ちになって権田選手はミスを取り返すために集中してると発言されたのでは?松木さんを責めるのは違うと思います」
と一部では理解も示されている。