徐行して駐車場の鉄製スロープを通過し、底面が接触した際に「エアバッグが作動した」。そんなドライブレコーダーの動画がツイッターに投稿され、1万近くリツイートされている。
投稿者は「頭が真っ白になり、恐怖心でいっぱいになりました」と振り返るが、自動車メーカー側はJ-CASTニュースの取材に「エアバッグは正常な作動だった」と話す。
「限りなく停止に近い徐行」
運転手の男性はエアバッグ作動時のドライブレコーダーの動画を2018年12月13日、ツイッターに公開。駐車場から公道に出るため、段差に敷かれる鉄製スロープを徐行しながら下り、車体の底面が地面に接触した際、運転席と助手席のエアバッグが作動した。「いてっ!」という声と同時に車は停止し、助手席に座る別の男性とともに「何?」「どうした?」と困惑している。
男性は「この程度の傾斜なら危険てこと」として現場の写真もアップ。当時、衝撃で首すじに赤いあざができた他、むち打ち症状と頭痛も発したという。
乗っていたのはダイハツ工業の軽スポーツカー「コペン エクスプレイ」。15年1月に購入し、18年1月に車検もクリアしていた。
男性はJ-CASTニュースの取材に応じ、エアバッグ作動時の状況について、
「スピードメーターは見ていませんでしたが、(公道の)手前でブレーキを踏み、時速10キロ以下にはなっていたと体感的に思います。ドライブレコーダーの映像を見たディーラーの方は、『限りなく停止に近い徐行』とおっしゃっていました」
と話した。作動した瞬間は「頭が真っ白になり、恐怖心でいっぱいになりました。その後は痛みと同乗者への罪悪感に襲われました」と状況が飲み込めなかった。
ツイッター上で動画・写真を見た他のユーザーからは「この傾斜でエアバックが作動することは普通では考えられないです」「同じ型のコペンに乗ってるものですが、車高下げてなんども底を擦ったり衝撃を与えたことがありますが、誤作動をしたことがありません」といった声があがっていた。一方で、「スロープの傾斜結構な段差があるみたいですし気を払わず突っ込んだらこうなった訳ですし自業自得としか言い様がないと思う」と、エアバッグ作動は問題ないとする向きもある。
「溝への落下と酷似した状況」
「自動車の不具合情報ホットライン」で消費者から事例の報告を受け付ける国土交通省の自動車局審査・リコール課に取材すると、動画と写真を確認のうえ、担当者は「これだけの情報では車に不具合があるかどうか判断できない。メーカーに確認してもらうしかない」とのことだった。
エアバッグの構造に問題はなかったのか。ダイハツに取材を申し込むと、同社調査のうえで回答があった。現地の状況なども含めて確認したといい、「正常な作動」としている。
「コペンに限らず、弊社のすべての車には取扱説明書があり、深い穴や溝への落下時にエアバッグが作動する可能性があると注意書きをしております。個別の事象になるので本件について詳細は申し上げられませんが、現地を確認した結果、溝への落下と酷似した状況と判断しました。そのためエアバッグに関しても正常に作動したと捉えています。本件によるリコールも検討していません」
ダイハツ公式サイトで閲覧できるコペンシリーズ共通の「車両取扱説明書」には、エアバッグの作動条件として「車両前方からフロントバンパーに強い衝撃を受けたとき」のほか、「走行中に路面などから車両下部に強い衝撃を受けたとき」と記載。後者の具体例として「高速で縁石などに衝突したとき」「深い穴や溝に落ち込んだとき」「ジャンプして地面に衝突したとき」と3つのケースを紹介している。
エアバッグ作動を判断するセンサーはダイハツ製の各車種で共通。センサーは衝撃によるG(重力加速度)の大きさなどに反応するようになっており、今回も車体の底がぶつかった時の衝撃を検知して「開くべくして開いた」と判断している。そのため「修理費用も基本的にはお客様負担になります」という。その上で、「乗っている方が感じる衝撃は体感になってしまうので、強いか弱いかを客観的に判断するのは難しいところがあります。ただ、センサーは正常に動作してエアバッグが開いたという認識でおります」と話している。