日本郵政、今なぜアフラックへ巨額出資なのか

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   日本郵政が米保険大手のアフラック・インコーポレーテッドに2700億円出資する。2019年中に発行済み株式の7%を取得し、4年後には事実上の筆頭株主になる。アフラックといえばがん保険の草分けで、国内で今も断トツの首位。拡大が見込める医療保険分野で以前から提携しており、その延長での出資ではあるが、今なぜ巨額出資なのか。

   日本郵政は2018年12月19日の取締役会で正式に決定した。従来からのアフラック商品の販売のほか、新商品の共同開発、国内外での共同投資、資産運用での協力などを検討するとみられる。

  • 日本郵政の次の一手は?(画像は同社公式サイトより)
    日本郵政の次の一手は?(画像は同社公式サイトより)
  • 日本郵政の次の一手は?(画像は同社公式サイトより)

提携を深化

   アフラック株は4年間保有すると議決権が増える仕組みで、4年後には出資比率が20%に達し、持ち分法の適用会社となる。ただ、アフラックの支配権を握るといった経営への関与はしないという。

   アフラックは1955年、「アメリカンファミリー生命保険」として創業、がんの治療費を保障する保険を世界で初めて開発した。日本進出は74年で、国内初のがん保険を売り出した。がん保険の契約件数は現在、約1500万件。国内生保・損害保険大手の参入が規制されたことでアフラックなどが長らく市場を独占。規制緩和で国内大手生保も2001年から参入しているが、アフラックの国内シェアは今も6割超を占める。

   日本郵政は2008年にアフラックのがん保険の取り扱いを始めた。そして13年には提携関係を一気に強化し、アフラックの商品を売る郵便局を全国約2万局に広げ、これまでに1万6000件の契約を獲得してきた。この背景には、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)があった。交渉の過程で、米国はアフラックなどの優位性を保つため日本のがん保険に、「官業」であるかんぽ生命が参入することを牽制してきた。このため、日本側は郵政とアフラックの提携という「ウルトラC」を繰り出すことで外資の権益を保護しつつ郵政の事業拡大を図る道を選択した。

   今回の出資は、その提携を更に深化させるもの。アフラックにとって、日本は収益の約8割を稼ぐ最重要市場だが、近年は参入企業が増えて競争が激化し、新規契約の獲得率は低下している。このため、日本での事業をさらに発展させるために、郵便局の販売網をフルに活用しようという狙いだ。

問われる経営手腕

   一方、日本郵政とって、収益改善は待ったなしだ。持ち株会社の下に郵便事業(日本郵便)、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の3社がぶら下がる体制だが、収益の大半を稼いできた金融2社は超低金利で収益が圧迫されているうえ、2社の株式を段階的に放出するよう定められている。なにより、肝心の郵便事業が苦しい。郵便の取扱数は2001年度の262億通をピークに減少の一途で、17年度には172億通。このペースだと19年度以降は営業赤字が常態化し、収支は年200億円ずつ悪化するとの見通しも示している。

   その中で、アフラックを持ち分法の適用会社とすることで、その利益の一部を連結決算に反映できるようになる。その利益への貢献は年数百億円になる見込みで、「とてつもなくいいリターン」(長門正貢社長)だ。

   むろん、これで十分とは到底言えない。郵政もそこは自覚しており、2018年5月の中期経営計画(20年度まで)発表の際、長門社長は「3年間で数千億円規模の投資も視野に収益の底上げを目指す」と述べ、M&A(企業の合併・買収)に意欲を示した。アフラックへの出資は中期計画の第1弾で、今回の出資発表の際も、長門社長は「今後も(M&Aや出資の)機会を探したい」と、改めて意欲を示した。

   ただ、2015年に6200億円で買収した豪州の物流大手、トール・ホールディングスは業績が低迷し、17年3月期には4000億円の減損損失を計上、民営化後初の最終赤字に転落した。17年に検討した野村不動産ホールディングスの買収も不調に終わるなど、M&Aには失敗やリスクもついて回るだけに、経営手腕が問われることになる。

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