「世界最大」中国の車市場が失速 対米貿易戦争以外の要因も

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   1年間の新車販売が3000万台の大台まであと一歩にまで迫り、世界最大の自動車市場となった中国で、車の売れ行きが失速している。2018年の新車販売は28年ぶりに減少に転じた模様で、新年の先行きも楽観できない。米中貿易戦争に伴う景気の失速、消費マインド冷え込みといった要因に加えて、住宅問題や交通渋滞などの対策が、これまで遅れていたことのツケも回ってきたように見える。

  • 「中国のシリコンバレー」と呼ばれる北京市海淀区中関村を走る幹線道路の渋滞の様子(2019年1月2日22時ごろ撮影)
    「中国のシリコンバレー」と呼ばれる北京市海淀区中関村を走る幹線道路の渋滞の様子(2019年1月2日22時ごろ撮影)
  • 「中国のシリコンバレー」と呼ばれる北京市海淀区中関村を走る幹線道路の渋滞の様子(2019年1月2日22時ごろ撮影)

30年近く続いた右肩上がり......

   私がこの原稿を執筆している 2019年1月2日時点で、中国自動車工業会は2018年の新車販売公式データは発表していない。しかし業界組織の資料によれば、昨年1月~10月の自動車生産は2283万台で、販売は2287万台。前年同期比でそれぞれ0.4%、0.1%減少した。最新データによると、11月の乗用車販売台数は202万台で、前年比18%減。この下げ幅は月間ベースで今年最大だった。これらの数字で判断すれば、1990年以来右肩上がりを続けてきた車の売れ行きが、初めてマイナスに転じたとみられる。

   昨年は下半期から販売台数の前年割れが続き、市場は総じて低迷。製造業者やディーラーも苦しんだ年だった。こうした状況に対応して、国会にあたる全国人民代表大会は今年1月2日の新年早々に「中華人民共和国購置税法」を採択。7月からは「購置税」という名の自動車購入税が一部減免される。だが、こうした措置によってマイカー需要が再び勢いづくとみる人は、だれもいないだろう。

   販売低迷の理由として、「景気失速」以外の要素を指摘してみる。

   北京では、地下鉄に乗れば30分もあれば行くことのできる場所に車で行こうとすると、往々にして1時間半以上もかかってしまう。また、1時間あたりの駐車料金は、往々にして都市に出稼ぎに来る農村労働者の時給よりも高くつく。極めて厳格な交通規制によって、ドライバーたちは毎月のように罰金を支払う事態に見舞われている。

   大都市では既に、車を運転することが気持ちのよいことではなくなっているのだ。

   もっと難しいのは、乗用車の主な購買層が、「90後」と呼ばれる1990年代に生まれた層であることだ。「90後」の若者たちは、既に結婚と出産、子育ての時代に入り、もし住宅を買えば、それから何十年間か、ローン負担がのしかかってくる。重いローンを抱える若者に、車にまで手を出す余力が乏しくなっているといえる。

日本勢にも正念場

   交通渋滞解消などで「自動車を持つ魅力」を取り戻せなければ、住宅ローンを抱える若者層はますます車を見限る形になってしまい、あと一歩まで迫っていた「新車販売年間3000万台」という大台は遠ざかってしまいかねない。

   さて、中国の自動車市場の全体的な低迷の中で、日本車の売れ行きは悪くなく、わずかではあるが増加したメーカーもあった。「東風日産」は 市場全体の失速の影響を受け、11月には前年同月比10%減。一方で、「ホンダシビックCR-V」「XR-V」の販売台数は11月に増加した。もっとも、ホンダの全体的な減少をカバーするほどではなかったが。

   注目されるのはトヨタだ。第一汽車集団との合弁「一汽トヨタ」の生産能力が懸念されるものの、今年は高級車アバロンの販売が始まり、好調な売れ行きが見込まれる。また広州汽車集団との合弁「広汽トヨタ」は生産能力の増強や8代目カムリの人気もあって、昨年の販売台数は6割以上の伸びを示した。さらに高級車レクサスの売れ行きも好調。「世界最大市場」の変調、失速にどう対応するかで日本の自動車各社の明暗は分かれる。日本勢も正念場を迎えつつある。

(在北京ジャーナリスト 陳言)

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