建設中の北陸新幹線と九州新幹線の「コスト」が増している。建設費が当初の計画より2割近く膨らんでいるのだ。今回は、JR西日本とJR九州が国側に支払う線路使用料(貸付料)を前倒しで活用するなどして必要な財源を確保する。
整備新幹線は早期開業を求める声が地元には強いが、当初の想定よりも建設費が上昇している。政府は国と地方の負担を抑える仕組みをひねり出したが――整備新幹線の費用対効果が問われることは避けられない。
JRは「負担増」応じられないとしていたが...
国土交通省は2018年12月18日、新たな建設費の枠組みを発表した。
2022年度の開業を目指す北陸新幹線金沢~敦賀間と九州新幹線武雄温泉~長崎間をめぐっては、労務単価の上昇や消費税増税のほか、東日本大震災を踏まえた耐震設計基準の改定などで、建設費が当初よりも3451億円増えることが国交省の調べで判明した。2012年度に着工した両新幹線の建設費は完成までに1兆6869億円かかると見込まれていたので、2割程度膨らむ計算だ。
増額分に対応するため、JR西とJR九州が将来、国側に支払う貸付料1729億円を前倒しで活用するほか、旧国鉄時代に建設した東海道、山陽、東北新幹線などをJR東、東海、西の3社に売却した際の「既存新幹線譲渡収入」の一部(652億円)も活用。残りは国と地方が負担するが、JRに対する貸付料を2020年度以降は増やすことも検討する。
JR西日本とJR九州は新幹線開業による収益の一定割合を線路使用料(貸付料)として30年間、国側に支払っている。政府内では建設費の増額分をJRが負担すべきだとの議論があったが、JR2社は「貸付料の算定は建設費の増加と連動しない仕組みになっている」(来島達夫JR西社長)などとして、負担増には応じられないと主張していた。国交省は2019年度以降もJRと協議する。