テニミュ仕掛け人が語る「空耳」と「2.5次元」誕生 2次元×舞台×ネットはこうしてつながった

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川上量生氏「ニコ動がここまで大きくなったのは...」

――その後で、片岡さんはドワンゴに転職されますね。そもそも何故ドワンゴと縁があったのでしょうか。

片岡:ニコ動でアニメの正規配信事業、そしてミュージカル制作を創業者の川上(量生)さんから請われたのがきっかけです。で、入社して川上さんに「何故僕を呼んだんですか?」と聞いたら「ニコ動がここまで大きくなったのは、「東方」「アイマス」「ミク」そして「テニミュ」の相乗効果だ」とかえってきたんです。
他の3コンテンツはネットで生まれた男性ユーザー主体のものですが、テニミュはリアルの文化がネットに輸入された上に、女性ファンが多い。「テニミュのおかげで女性のニコ動ユーザーが増えたんだ」と川上さんに直接言われて、そんなに影響があったのかと想像以上で、嬉しいと共に驚きでした。

――それほどまでに影響があったと。そして実際にニコニコミュージカルを展開されました。

片岡:テニミュの延長線上で、ニコ動独自のミュージカルを展開してネット中継も行って、女性のニコ動ユーザーを増やして演劇も身近にすることが狙いでした。その時、今まで通りの2.5次元舞台の他にボカロというネット発の新しい文化に注目してみました。「ココロ」「カンタレラ」「千本桜」などのミュージカルを手掛けましたが、こちらの方がうまくいきました。なぜかというと彼ら(ボカロP)が作る詞の世界が、それまでの音楽業界にはない斬新で、独特の物語性があった。もちろん初音ミクをはじめとしたミクファミリーのキャラクターたちが彼らの創作欲を刺激してくれた。これもある意味キャラクターあっての二次創作で、ネット特有の文化で世の中の旬だったので、それを捉えられたのがよかった。

――そうした新しいビジネス展開で、演劇文化やネット文化にどんな影響があったとお思いですか。

片岡:劇場でしか観られなかった舞台をネット配信し、チケットも販売するシステムも定着しました。小さな劇団でもノーコストでできるし、俳優が田舎の親族に活躍してる姿を見せて安心させることもできる(笑)。劇場という物理的な障壁を取り払って舞台を楽しむビジネスモデルを川上さんが確立し、その中身を僕がプロデュースさせてもらいました。

――今やテニミュ以外にもアニメ関係のライブが盛況ですし、ニコ動もニコファーレのようなリアルイベントが一層大きくなっています。

片岡:「ネットとリアルはイコールになる。近いんだ」というのが川上さんの発想です。ネットの普及で1日スマホの前で過ごせるようになっても、人はその埋め合わせというか、バランスを取ってつながりを求める。そのつながりを共有できる場がライブエンタテイメントで、近年あらゆる娯楽の中で唯一伸びている分野です。2.5次元やボカロ音楽が世界にも普及してそういう時代が来るのに、テニミュと空耳も少なからず貢献したのかなと思います。

――今振り返ってみて、平成初期から抱いていた、舞台芸術をもっと面白く、日本に根付かせたいという夢は叶ったでしょうか。

片岡:嬉しいですね。僕がラッキーだったと思うのは、日本にミュージカルを観る文化がそこまで普及してなかったことでした。そこで、僕がずっと仕事をしてきたマンガ・アニメをミュージカルにしたら面白いんじゃないかと思ってやってみたら、時代も後押ししてくれたと思います。
何か社会の中にひょっとした現象があったら、それが時代を映す鏡だと思ったら、それをアニメなどのコンテンツにすれば広がる。僕がずっとやり続けてきたのはそういうことでした。

片岡義朗さん プロフィール
かたおか・よしろう 1945年生まれ。アニメプロデューサーとして「タッチ」「ハイスクール!奇面組」「るろうに剣心」などのプロデュースに携わる。マーベラスエンターテインメント(現マーベラス)在籍時の2003年にミュージカル「テニスの王子様」を制作し、その後も多くのマンガ・アニメのミュージカル化を手がけた。2009年から2013年にはドワンゴ執行役員としてボカロ曲のミュージカル化や堀江貴文主演「クリスマスキャロル」などをプロデュース。現在はコントラ代表取締役社長として、コンテンツビジネスのコンサルティングやアニメ・舞台企画に携わる。


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