トヨタ労組「方針転換」がもたらすもの 春闘の存在意義にも影響が?

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「トヨタショック」でムード一変

   一見、回答が要求を上回ったように映るが、そうとは言えない。まず、会社の回答は、正社員だけでなくパートや期間従業員など全組合員を対象としている。また、多くの場合、賃上げ率はベアと定期昇給を合わせた数字で公表するが、手当まで含めて算出している。これは極めて異例だ。トヨタ労組の西野勝義執行委員長は「要求と違う今までにない形が出てきたのは複雑だ」と述べた。

   一方で、これを受け入れたトヨタ労組には「共闘という意味では問題を残した」(金属労協の高倉明議長)、「賃金データはきちっとしないといけない」(連合の神津里季生会長)などと苦言が相次いだ。

   トヨタは日本で最も利益を上げている会社だ。春闘ではトヨタが示す回答は、他の大企業やグループ企業などの目安になり、他労組はトヨタの交渉状況をにらみながら、それに近い回答を経営側から引き出そうとしてきた。そのトヨタが賃上げの相場づくりの牽引役を降りたことで、ムードはすっかり変わってしまった。

   2019年春闘では、トヨタ労組の上部団体である全トヨタ労働組合連合会がベア相当額を月3000円以上とする目安を示したが、実際に要求に盛り込むかは各労組の判断に委ねる方針だ。自動車総連はベアの具体額を示すことを見送った。

   2018年の「トヨタショック」をきっかけに、各社が今後、ベアを避ける流れは定着するだろう。ベアという目安がなくなれば、全体の水準が切り下がる可能性もある。労組の弱体化とともに、60年以上続いた春闘は、その役割を終える局面にきているのかもしれない。

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