中古住宅を活用するさまざまな動きが見えつつある。買い手の不安解消などを目指し、2018年春に施行された改正宅地建物取引業法では、不動産仲介業者が建物状況調査のあっせんの可否を買い手に示すことなどを義務づけた。住宅をリノベーションする取り組みも広がっている。ただ、中古住宅の活用が欧米並みに広がるには課題も多い。
米国など9割、日本は2割前後?
国土交通省の調べでは、日本で流通している中古住宅は2013年時点で全体の14.7%。平成が始まった1989年には8.0%だったのを見れば、市場は徐々に拡大しているのは間違いない。だが、米国や英国では約9割、フランスでも約7割と欧米の主要国に比べればかなりの低水準だ。
日本の場合、戦後から高度経済成長期にかけて住宅不足が深刻化し、数を造ることが最優先された。この結果、住宅の質は低下。地価が急騰する一方で、住宅は20年も建てば価値がなくなると評価され、「買うなら新築」という「新築志向」が生まれた。このため中古住宅はほぼ見向きもされないできたといえる。
だが、中古住宅を使おうという動きはだんだん盛り上がりつつあり、「実際には2割を軽く超えているのではないか」(不動産関係者)との見方もある。その背景の一つは、中古住宅が放置され、空き家問題が深刻化していることから、政府が中古住宅活用の環境を整えようとしていることがある。宅建業法の改正などがその現れだ。
仲介業者の言うことを「そのまま信じる」日本人
一方、人手不足をはじめとした人権費の高騰などから、新築住宅の価格は上がっている。「都心のマンションなどは、大企業のエリート社員ぐらいしか手を出せない状況」(不動産関係者)とされ、新築を買えない人たちが中古住宅に目を向けていることもある。
さらに、若い人の意識の変化も大きい。仲介業を営むある不動産関係者は「今の若い世代は『シェア』が当たり前になっており、中古も新築もこだわらなくなっている」と話す。 ただ、欧米のレベルまで高まるかについては疑問の声が圧倒的だ。米国などでは徹底されている住宅診断を進んで受けようという意識は不動産業界にも消費者にも薄いとされる。「消費者の性善説は強く、仲介業者に言われたことをそのまま信じて購入する人はいまだに多い」と話す不動産関係者は少なくない。
2019年10月に予定されている消費税率引き上げに向け、政府は新築住宅の優遇策を打ち出しているように、国全体としても、いまだに新築志向を後押ししている側面が強い。「日本人は新しいものに飛びつく傾向が強く、政府の施策もあって、新築志向が消えることはないだろう」(不動産関係者)との見方も多い。
現状のままでは、中古住宅の一段の拡大への壁は高い。