大槻義彦教授が振り返る「オカルトの平成史」 「最近は敵がいなくて寂しい」

富士フイルムが開発した糖の吸収を抑えるサプリが500円+税で

ユリ・ゲラーの「時計破壊念力」を粉砕

   当時、早稲田大学の理工学部教授を務めていた大槻さんは、物理学の現役大学教授ということでたびたびオカルト検証番組への出演依頼があり、その都度出演に応じてきた。そんな大槻さんがテレビ局のスタッフに頼まれたのは、スプーン曲げで有名な超能力者であるユリ・ゲラー氏についての検証番組「水曜特バン!『驚異の超能力スペシャルIII』」(テレビ朝日系)への出演だった。

   番組でユリ・ゲラー氏が披露したのは、「生放送を通じて日本全国に念力を送り、視聴者宅にある時計を破壊する」という念力ショー。スタジオには約30人の電話オペレーターが待機し、視聴者から時計の不調を伝える電話を受け付けるという形で、ユリ・ゲラー氏の念力が届いたかどうかを確認するというものだった(※1)。

   番組が終わる頃には全国から約60件の「報告」が続々。その場でトリックの存在に気付きつつも情報不足で核心を突くことができなかった大槻教授だったが、当たりはついていたという。すぐに解明に着手し、その結果、確率論を駆使した見事な解説でユリ・ゲラー氏の超能力を粉砕し、世の中にその事実を公表したのだった。

「彼(ユリ・ゲラー氏)は『私の力は物理学の法則を超えている』と話していましたが、冗談じゃない。念力など送ろうが送るまいが時計は壊れます。問題は時計の数と故障率。スタジオ内では時計の故障率は分からなかったので言及は避けましたが、後日、大学の私の研究室の卒業生でシチズンに勤務している者に、『電池切れを含む時計の故障率を教えてくれ』と頼みました。すぐに返事が来て、『腕時計については3年以内の故障を、置き時計や掛け時計については9ヶ月以内の故障を想定している』というものでした。それで分かったんです」

「後日、番組の視聴率を聞いたところ、全国平均で約15%だったと。となると、日本の人口が約1億2000万人ですから、その15%は1800万人。視聴者1人の目の前に1個腕時計があったとして、その電池が寿命の3年を迎える確率は1000分の1(3年=約1000日なので)。つまり、1日のうち、視聴者が持っている時計のうち1万8000個が『何らかの原因で止まる』わけです。番組の放送時間は約3時間だったので、放送中に止まる時計はその8分の1......約2000個ですよ。『壊れた』という報告が来て当たり前なんですよ!(笑)」

   たくさんの視聴者を相手にして初めて成り立つトリックであることを発表したところ、その後、ユリ・ゲラー氏の来日の頻度は大幅に減ったと大槻教授は言う。

   ※1この時とは別に、ユリ・ゲラー氏は1974年来日時に、「木曜スペシャル 驚異の超能力!! 世紀の念力男ユリ・ゲラーが奇蹟を起こす!」(日本テレビ系)に出演し、「視聴者の目の前の時計を動かす」という念力ショーを披露している。

姉妹サイト