ネットニュースに欠かせないのが「炎上ネタ」。一般的に「炎上」はネガティブなイメージだが、それを原動力に、明るくたくましく生きる人々もいる。
そんな人々をたたえるため、J-CASTニュースはこのほど、第1回となる「炎上アワード」を開催。初代受賞者として、クロちゃん(安田大サーカス)とともに、田端信太郎さん(ZOZO コミュニケーションデザイン室 室長)を選出した。
田端さんは、ツイッターの発言をめぐり、たびたび「炎上」。今年発売の著書『ブランド人になれ! 会社の奴隷解放宣言』(幻冬舎)でも「炎上しない奴は燃えないゴミだ」などと、独自の炎上論を披露している。本業とSNSの関係性を聞くとともに、2018年を振り返ってもらった。
(聞き手・構成・プレゼンター:J-CASTニュース編集部 城戸譲)
「炎上」というより「賛否両論」
「貴殿は、これまでツイッターを主戦場に、新たなビジネスパーソンの形を提示してきました。また、自他ともに認める『炎上』の使い手として、所属組織の枠にとらわれず、ネット世論に一石を投じ続けておられます。よって、その功績をたたえ、ここに賞します」(プレゼンターによる賞状読み上げ)
――この度は、炎上アワード受賞、おめでとうございます。
田端:ありがとうございます。「アワード」って、基本的には誉め言葉ですからね。まず、「炎上してる」って状態が、基本ネガティブに言われるのが、わからないんですよね。炎上できることも才能ですよ。ほとんどの人は、炎上したくてもできませんから。
――田端さんにとっての「炎上」とは、どんな定義ですか?
田端:世間的な「炎上」は定義できるんですけど、僕にとってと言われると、わからないんですよね。僕は客観的に見て、「炎上」していることも多いのかもしれないですけれども、たぶんほとんどのケースで「賛否両論」だと思うんですよ。五分五分というか。
――「炎上」を繰り返すうえで、精神的なダメージはないんですか?
田端:ないです。なにがどうダメージなのかがわからない。一切ツイッターのリプライが来なくなって、スルーされ続けたほうが、僕にとってはダメージですよ。「もうちょっと上手いこと言えたつもりなんだけどな。スランプだなぁ」みたいな。
胸に手を当てて、「なんか悪いことしたかな」と思うと、「そんなに悪いことしたかなあ、僕」と。いろんな人が、僕の主張や考え方に様々に感想を持つことも、当然自由ですよ。全員が、僕の考えに従うべきだ! とかは全く思わないし、いろんなことを思う人はいるよね、と。僕にとって炎上とはそれだけですよ。
ほとんどの炎上は「いわゆる僕のオピニオンについて」
――著書では「炎上しない奴は燃えないゴミだ」「炎上上等」との表現もありました。どのような姿勢で、「炎上」と向き合っているのでしょうか。
田端:「炎上上等」は半分居直って煽ってるので、もう少し丁寧にお伝えします。これは誓って言いますが、ツイートの内容で事実関係が間違っている場合は、必ず消したり修正したりしています。
僕に当てはまる「炎上」というのは、ほとんどいわゆる僕のオピニオンについてなんですよね。僕が発信する内容で、ファクトが間違ってたり、僕自身が何か人に迷惑をかける行動をしているときに居直る気持ちは1ミリもないんです。でも、僕の主義主張について批判が多く来る「炎上」はそれとは全く違うんです。僕の発言が、不愉快だったら見なければいいですし、別に僕が頼んだわけでもないですから。僕のツイッターをフォローしている18万人の人って、別に僕から「なってくれ」と頼んだわけじゃなくて、「なんか面白い奴いるな」って、勝手にフォローしてきたわけじゃないですか。
リツイートだってたどっていったら、僕の意見をリツイートした人が僕のことをフォローしていて、そういう人をフォローしたという意味では、間接的にその人自身にも責任がある。それに、ブロックとかミュートとか、見ない方法はいくらでもあるはずです。
――LINEからZOZO(当時はスタートトゥデイ)に移られた直後、今年3月には「高額納税者党を作ってほしい。少数派を多数派が弾圧する衆愚主義じゃないか」といった発言が話題になりました。このコメントは、2016年の所得納税額のほぼ5割を、給与所得者全体の4.2%に過ぎない「1000万円超」の人々が負担していたという「日経ビジュアルデータ」の投稿への引用ツイートでしたが、一部ユーザーから低所得者層蔑視と取られて、大きな話題になりました。これもオピニオンから「炎上」につながった例ですね。
田端:あの時は「#ZOZO不買運動」みたいなハッシュタグが作られて、「退会祭り」も起きました。会社にとっても、もちろんZOZOの業績全体から見たら誤差以下みたいなもんですが、実額としてはゼロじゃないですね。「そんなもん鼻くそみたいなもんじゃないですか」と笑い飛ばせる金額ではないですね。
――今年6月には、過労自殺者に対する「自己責任論」が注目され、こちらも不買運動に発展しました。
田端:過労で自殺した方の遺族の家へ行って、その前で僕が、メガホンで怒鳴りかけているんだったら、「そんなひどいことよく言えますね」「人でなし」と言われるのはわかります。でも僕はツイッターで自分の主張を一般論として言っているだけです。たとえば過労自殺については企業側の使用者の責任もあるけど、本人の判断と責任で避けられた可能性がゼロではない。当たり前のことじゃないですかね。「誰か傷つくかもしれない」っていう意見で、僕の言論の自由をなんで制限されないといかんのだろうって思うんですよ。誰も傷つける可能性がない言論や主張ってありえないです。
藤田孝典さんは「別に嫌いじゃない」
――「所属企業が責任を負うべき」といった意見もあります。
田端:意見が気に入らないからと、僕に置き換えればサラリーマンとしての勤務先、タレントだったらCM契約してる企業のお客様相談センターにすぐ電話をかけて、「スポンサーの圧力で引きずり落ろせ」みたいなことを大勢でやるのが、本気で議論したら勝てないと思っている連中の卑怯な手なんですよ。「先生に言いつけてやる」「ママに言いつけてやる」ぐらいなレベルの、告げ口の発想だと思ってるんだけど。だから嫌いですよね、そういう人種。
会社のことで言えば、僕のソーシャルでの発言で、カスタマーサポート(CS)に色々とクレームが来たり、迷惑をかけていることは現実問題としてある。そういうクレーム対応してくれてる人からすると、田端は余計な仕事を増やしやがって! 以外の何者でもないですよね。でも、もちろん僕も、わざと余計な仕事を増やしたいわけじゃないんですよ。一個人の発言を会社にかぶせて、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」って発想でクレーム入れるのはどうなのって思っていますけど、そういう「べき論」を言ったところでそれが止むわけでもないからね。それに対しては、申し訳ないなって気持ちがあります。
例えば、(退会祭りは)入社直後だったので、そういう申し訳なさを示すのも含めて、CSスタッフをランチに誘って、お昼をおごったりしたんですよ。「きっとあの人って、どうせ何も悪いことしたと思ってなくて、最前線で対応をしている人の気持ちを全然わかってないのだろうなあ」って思われているんじゃないかと思って。僕としては、せめて申し訳ないとか気持ちを示すのは、人として当然だと思っていて、そこまで居直るつもりはないよと。
――先ほど「嫌いな人種」の話がありましたが、逆に「好きな人種」はどういうタイプですか?
田端:今年で言うと、(「富裕層課税」をめぐって議論した)藤田孝典さん(NPO法人ほっとプラス代表理事)。意見はまったく一致しないですけど、まず顔出し実名なのがいいですね。「生討論しましょうよ」と煽っても、たいていあの手の人たちって来ないんですよ。でも、あの人よくわからないんですけど、来るんですよ。逃げずに。そういう正々堂々感があるのは、僕は嫌いじゃないです。
藤田さんだって「ZOZOTOWN不買運動をやろう」とか煽ることもできたかもしれない。僕がもし藤田さんを叩いているのをみて、僕の賛同者が藤田さんのNPOにイタ電しようとかいうことになったら、本当に人間として卑怯だなっていう。最近はよくそういう方向に行く人がいるから、そういうの本当に嫌なんですよね。人として、クソだと思います。
ツイッターは「月に行くよりは、本業に関係ある」
――2018年は、前澤友作社長から誘われる形で、ZOZOへ転職されました。この1年を振り返ってどうですか。
田端:いろんなことがありすぎて、もう2~3年くらい経っているみたいですね。正式入社は3月ですが、お話をいただいたのは、去年の9月下旬くらいかな。そこら辺から前澤さんから「こういうツイートしようと思うんだけど、どう思います?」とか、月1~2回のペースで、LINE経由でしばしば相談を受けていましたから。
――SNSでの個人活動は、本業の「株式会社ZOZO コミュニケーションデザイン室 室長」としての仕事にどのような影響を与えているのでしょうか。
田端:実に、いい質問ですねぇ。たとえば、プライベートブランド「ZOZO」の「ZOZOHEAT」発売のプレスリリースが出たら、僕がツイートして拡散することができるわけですよ。実際していますし。フォロワーが今18万くらい(18年12月下旬時点)いるから、その拡散力を広報として使わない手がない。そういうニュースの露出を増やすことが、コミュニケーションデザイン室のミッションだとしたら、そこに関しては仕事で出すべき成果のベクトルと僕のツイッター活動が、完璧に重なっているんですよね。
(前澤社長のように)月に行くよりは、よっぽど本業に関係あるみたいな気もします(笑)。前澤みたいに、月に行くのも仕事のインスピレーションになるって言う人もいるし、たしかにそうかなと思うけど、それから比べるとかなり(業務に)近いものですよ。
普通の企業広報の点だと、言わなくてもいい余計なことを言いまくってリスクを取っているわけですよね、損得で言ったら。普通の発想なら「余計な仕事を増やしやがって」と。ただ、自己正当化するようでホント恥ずかしいんですが、余計なことを言う人っていうのは、裏返すと「正直な人」「嘘がつけない人」ということになる。僕は「正直こそが最高の戦略」だといつも思っています。だから、製品や会社のことをアピールするときにも、サラリーマンが嫌々、仕事だからと言われてるヤラされ感が少なくなるのでないか、と思います。
あと、ソーシャルでの批判リプライに慣れていると、こういうこと言ったときにこういう反応が来るって、ひと通りのパターンはわかるんですよ。だから、例えば、前澤がソーシャルで何か発表しようとして、それに対する"意地悪だけれど、有り得そうな想定質問"を洗い出そう思えば、僕はメチャクチャ作りまくれますね(笑)。
「爆死しない程度」には炎上をコントロールできている
――賞状では「炎上の使い手」と表現させていただきましたが、「言葉の使い手」が正しいですね。
田端:(旧ライブドア時代に事業責任者だった)ライブドアニュースでの経験から、ニュースやトピックス記事の見出しの「てにをは」をどう変えると、ページビューがどんな風に変わる、といったニュアンスはよくわかるんです。結構僕は炎上しているのかもしれないけど、黒焦げ死亡での炎上爆死はしていない。こうやっていけしゃあしゃあと、今日も「ありがとうございます!」って、炎上アワードをもらってる(笑)。あんまり繊細ではないかもしれないけど、少なくとも爆死しない程度には、火加減コントロールができている気がします。
――今後の目標を教えてください。
田端:ツイッターは大好きなんですけど、ツイッターの一本足打法みたいになっているのが、個人的にはアレで。ひっそりインスタとかもやっているんですが、僕にそういうおしゃれさは求められてないんだなあと。そういう意味では、ツイッターだけもあれなので、それ以外のプラットフォームでも存在感を増やしていきたいですね。
――最後に、読者に向けて一言お願いいたします。
田端:炎上できることも才能です。僕は炎上して暖を取りますので、炎上したくてもできない、あるいは、そもそも炎上なんかしたくもないよ、という皆様は、ぜひプライベートブランド「ZOZO」の新商品、吸湿発熱インナー「ZOZOHEAT」(990円)を着て、温まって頂ければ幸いです。