ソフトバンク、FA全敗で補強なし? それでも「痛くもかゆくもない」理由

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   今季、日本一に輝いたソフトバンクが鉄壁の「プロテクト」で来季のFA流出を封じている。ソフトバンクは今オフの契約更改で、来オフに国内FA(フリーエージェント)権取得が見込まれる中村晃外野手(29)、今宮健太内野手(27)と複数年契約を結ぶことに成功。同じく国内FA権取得見込みのデニス・サファテ投手(37)とはすでに2021年までの契約を結んでおり、FA流出阻止へ万全の態勢を敷いている。

   今オフ、ソフトバンクはFAでの補強に失敗した。獲得を目指していた浅村栄斗内野手(28)は楽天へ、西勇輝投手(28)は阪神に移籍。西投手の阪神入りが決定した18年12月7日以降、ソフトバンクに選手の補強に関する動きはない。今後、新外国人の入団やトレードなどでの補強は十分あり得るが、来季は現在支配下にいる選手と、ドラフトで獲得した即戦力を主体にしたチーム編成となりそうだ。

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FA補強よりもFA流出阻止が優先事項

   今回のFA補強失敗について、球団に精通する関係者は「浅村と西はチームにとって絶対に必要な選手ではなかった。ただでさえソフトバンクは選手層が厚いので、その層に厚みを持たせるためのものに過ぎなかった。獲得に失敗しても球団にとって大きな痛手にはならないはず。むしろ来シーズンのオフにFA権を取得する選手の流出を防ぐ方が大きな仕事だった」と話す。

   来オフに国内FA権を取得する見込みの選手は、中村、今宮、サファテの3選手で、松田宣浩内野手(35)が2度目の海外FA権を取得する見込みだ。中村、今宮ともに今オフの契約更改で4年の複数年契約を勝ち取り、来オフのFA移籍を封印する形となった。松田は来季、4年契約の最終年となるが、球団は最大級の誠意をもって引き留めにかかるとみられ、FA権行使の可能性は低いだろう。

   ソフトバンクは日本シリーズ翌日に、五十嵐亮太投手(39)、寺原隼人投手(35)、摂津正投手(36)らベテラン投手陣をはじめ、8選手に戦力外通告を行った。日本一達成翌日という異例ともいえる展開で大鉈を振るったソフトバンクは、今オフの人員整理で10億円以上ものコストカットに成功。これを活用する形で、中村、今宮の複数年契約にこぎつけたとみられる。

2011年の「杉内流出」が転機に

   補強よりもFA流出阻止を優先させたソフトバンクには、FAにまつわる苦い過去がある。2011年オフ、当時エースだった杉内俊哉投手がFA権を行使して巨人に移籍。4年連続2ケタ勝利を収めたものの、球団の評価が思ったよりも低かったこともありFAの行使に踏み切ったとされるが、これに加えて杉内氏に対する球団関係者の失言が大きく影響したといわれている。

   いわば「人災」に近い形でのエースの流出に球団は危機を覚え、以降、FAに関しては慎重な対応をしてきた。2012年以降、ソフトバンクからFAで他球団に移籍した選手は3人いるが、いずれも補償を必要としないランクCの選手で、エース級の大物選手の流出を防いできた。2017年オフには、今オフの国内FA権取得を見越し、柳田悠岐外野手(30)と3年契約を結んでいる。

   翌年にFA権の取得が見込まれる選手は、FA権行使を見据えて単年契約を結ぶ傾向が多く見られ、12球団で最もFA移籍が多い西武では恒例化しつつある。ソフトバンクは大胆な戦力外通告を行う一方で、FA権行使の可能性がある選手には手厚いフォローを入れる。

「ソフトバンクはかけるべきところにはしっかり金をかける。杉内の過去があるのでFAに関しては他球団よりも神経質になっている。選手も複数年を蹴ってまで他球団に移籍しようとはしないし、金額もそれなりのものが用意される。選手の流出を防ぐことが厚い選手層につながる。ソフトバンクは補強できなくても痛くもかゆくもないはず」(前出の関係者)

   今オフ、FA補強に成功した巨人は、西武からFAで移籍した炭谷銀仁朗捕手(31)の人的補償で西武に内海哲也投手(36)を奪われた。今後、広島にも人的補償で選手を取られる可能性が残っている。巨人とは対照的に、FAで全敗を喫したソフトバンクは補強なしの無傷のままで年を越すことになりそうだ。

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