ステーキ専門店「いきなり!ステーキ」の競合店が続々と開店している。
一人勝ちしていた"本家"を外食チェーンの猛者が襲いかかるが、本家に話を聞いたところ、余裕たっぷりの模様だ。
成功のワケは「うまい、安い、早い」
2013年12月に銀座に1号店をオープンし、18年11月時点で350店舗まで拡大した「いきなり!ステーキ」。
ホットペッパーグルメ外食総研上席研究員の稲垣昌宏氏は12月19日、J-CASTニュースの取材に、成功の理由を2点挙げる。
「1つ目は、高級料理の代名詞的な存在であったステーキと、カジュアルな飲食業態である立ち食いを掛け合わせた点です。2つ目はメニュー数を絞って業務効率を上げながら、マイスターと呼ばれるプロが肉を調理することで、おいしさと低価格を両立させたことです」
運営するペッパーフードサービスの一瀬邦夫社長も、支持を集めた理由を「人間の本能を刺激しているからでしょう。簡単に言えば、『うまい、安い、早い』です」(『企業家倶楽部』18年12月号より)と話している。
そのほか、グラム単位の価格設定や、食べた肉の量に応じてポイントが貯まる「肉マイレージカード」など、ユニークな施策も打ち出している。
しかし、2018年から「やっぱり あさくま」(1月)、「アッ!そうだステーキ」(3月)、「カミナリステーキ」(5月)、「やっぱ!ステーキや」(9月)と、大手外食チェーンによるステーキ専門店への参入が相次いでいる。
ニュースサイト「男子専科」の1月12日付記事によれば、「やっぱり あさくま」の運営元の親会社であるテンポスホールディングス・森下篤史社長は、「いきなりステーキと同じぐらいの価格で、とにかく真似する」と店のコンセプトを明かしている。
新規参入は歓迎する一方、参入障壁も構築
競争の激化を、本家はどう受け止めているのか。ペッパーフードサービスの広報担当者は、J-CASTニュースの取材に、「『いきなり!ステーキ』は、ステーキを文化にする!と掲げて展開してまいりました。その点で申し上げますと、非常に良い傾向であると感じております」と余裕のコメント。
一方で、事業の核となる強みは模倣されないよう、「ステーキの提供システム」(客のテーブルへの誘導からメニューの提供までの一連の流れ)、「顧客管理システム」(肉マイレージカードの仕組み)の特許を取得しているという。
前述の稲垣氏は、焼肉、ステーキ、ハンバーグ等の専業店の市場規模は年々増加し、今後も一定の人気が続くと予想する。懸念点については、
「このペースで出店が続くと過当競争を生み出す可能性もあります。また、ステーキは比較的シンプルな調理法なので素材の味が大事になりますが、今後、ブランド牛の確保が難しくなってくると、仕入れコストが課題になるかもしれません」
(J-CASTニュース編集部 谷本陵)